婚姻費用(生活費)や養育費を相手方に支払うようにとの調停が成立したり、あるいは裁判官による判断(審判)が出ても、相手方が払ってくれなければ、結局絵に描いた餅になってしまいます。
これまで、そういった支払いがないときに裁判所を通じて履行勧告・履行命令という手続きをとったり、あるいは給与などの差押えといった強制執行手続きがとれるというお話しをしました。
こういった手続き、特に給与の差押え、あるいは財産の差押えをするには、勤め先、あるいは預貯金口座などが分からないとできません。
しかし、離婚して何年も経ち、相手方の勤め先が変わってしまい、今どこに勤めているか分からない、あるいはどこに預金口座を持っているか分からないなどといったケースはよくあると思います。
特に預金口座の差押えをしようと思うと、通常銀行のどこの支店かまで分からないと難しいため、全く足がかりがないとお手上げになってしまう可能性があります。
そういった場合には、財産開示といって、支払義務がある者に対して裁判所から財産を開示するよう求めてもらう手続きの利用が考えられます。
これは、10年ほど前に新設された制度で、申立をするには、確定した判決,調停調書が必要で、公正証書ではできません。また、要件として債権の全額が回収できなかった場合、完全に回収できない場合であることが必要です。
裁判所が財産開示の申立てが相当と考えると、財産開示期日を決めて義務ある者を裁判所に呼び出します。支払義務ある者は期日までに財産目録を提出しなければならず、期日では嘘を言わないという宣誓をして、自分の財産を述べ、裁判所または申立人の質問に答えなければなりません、
もし、義務者が正当な理由もなく裁判所に来なかった場合、嘘をいった場合は一定の金額(30万円以下)の支払をしなければならないとの制裁もあります。
ただ、この制度を使うにしても、相手方が勤めていてある程度資力がありそうでないと意味がないですし、行方不明になっているときはそもそも使えません。
また、支払義務者のプライバシー侵害への配慮、濫用、支払義務者への不当な圧力を防ぐというためという配慮から、一旦開示がされると原則3年間は再度開示を命ぜられないとなっています。ですから、一度開示を受けて、支払が再開されても3年のうちにまた支払が滞ったりすると、3年経過しないと財産開示の申立てができないという制約もあります。
こういった制約があるためか、実際のところさほど利用されていないというのが現状のようです。
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