法律のいろは

子の引渡しについて・続

2014年11月24日 更新 

 以前、何回かに渡り親権・子どもの引渡しについてのお話をしました。

 今日はその補足として、離婚後親権をもつ親が、現在子をみている親(監護権者でもない)に子供を引き渡すよう求めたとき、今子供をみている親は引き渡さなければならないのか、という点を取り上げてみたいと思います。

 日本の場合には、離婚前、すなわち夫婦であるうちは子供に対する親権は共同して行うのが原則ですが、離婚をするときは、夫婦のうち一方が親権者となる、単独親権になっています。

 ですから、親権者でない親が子供に身の周りの世話をしたり、しつけ・教育などをする監護権をもっていない限り、たとえ事実上子供の面倒をみていたとしても、それは何ら法的な根拠のないまま、子供をみていることになってしまいます。

 そのため、親権者である親が子供の引渡しを求めてくると、拒む法的根拠がない、ということになってしまうのです。

 実際にこのようなことが問題になった裁判例があります。

 事案は協議離婚の際に子供たちの親権者を父親と定めて離婚したあと、子供たちが父親に無駄で母親と同居をするようになったことから、子供たちのうち一人の親権者を母親に変更し、子供たちが法的な手続きによらずに各親権者である父・母のもとを離れないよう監護養育する合意を家庭裁判所の調停でしました。しかしその後母親が親権者でない他の子供たちとも同居するに至ったので、父親が子供たちを引き渡すよう求めたというものです。

 裁判所は、母親が子供を見る権限は親権者である父親が黙示的に監護を委任しているからとみて、父親が上記のとおり子供の引渡しを求めている以上、委任契約が解除され、母親は子供の引渡しを拒む権限はないとしました。

 ただ、この事案では親権で主に問題になっているのは子供の身の回りの世話などといった、いわゆる身上監護であるため、どちらが子供をみるのが適切かという点から子の引渡しを認めるのが妥当か考えるべきとして、親権者変更の申立をしていない母親に対して申立を促し、親権者がいずれが適切かという判断と、子の引渡しの問題を一体的に解決すべきとしました。

 なおこの事案では、子供をみている母親に引き続き子供たちを見させるのが妥当と思われる事情がある一方、父親の監護状況についてももう少し検討の必要があるとしています。

 子供の引き渡しをめぐっては熾烈な争いになることが多々ありますが、子供にとってどちらの親がみるのが今後の成長にとって良いといえるか、という観点から慎重に考えるべき問題です。ですから、親権者でないからといって、子の引渡しを拒めない、と紋切り型に判断するべきではなく、裁判例のような柔軟な対応が必要になることがあるでしょう。

 

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