法律のいろは

離婚の際の養育費と収入

2015年4月1日 更新 

 離婚の際に養育費を定めるにあたって,収入を基準とした一つの目安があるという話はしました。それでは,現在収入がない場合には絶対にゼロ計算されるのでしょうか?問題となるのは,親権を持つことになった親の収入がない場合(簡単な例としては,子供が小さい母親のケース)と親権を持たない方の親の収入がないケースの二つに分かれるかと思われます。以前,簡単に触れましたが,裁判例を含めて触れていきます。

 まず,親権を持たない方の親の収入がないケースを考えていきます。基本的には収入を基準としますので,考慮されるのは数少ないケースにはなります。その一つとして,婚姻費用の例ではありますが,一度調停で支払いの合意が成立してからそんなに時期が明かないうちに勤務先を辞めたことにより収入が下がったことを理由に減額を求めたケースです。第1審と第2審で判断が分かれていますが,第1審で収入の減少を前提に減額を認めた判断を第2審が否定し減額をみとめなかったものです。
 第2審の判断では,減額には当初の合意時に予測できなかった事情の変更が必要であると述べています。そのうえで,支払う側の年齢や経験などの事情からすると現在も以前と同じだけの収入を得られるだけの能力がある(潜在的稼働能力がある)から,収入の減少を前提とした減額を認めるだけの事情はないと判断しています。
 事情の変更についての判断ではなく,あくまでも事情の変更といいうる事情が存在しないという判断かと思われますが,ケースとしての特殊性[支払う側が医者で調停成立から数か月で自らの意思で退職の上収入の少ない学生になったとも考えられるケース)もあるものと考えられます。したがって,当然に一般化まではできないでしょう。

 次に,支払う側が退職して無収入になったため,養育費の免除を求めたものの認められなかったケースが存在します。このケースも特殊ですが,一度養育費が審判で決まったのち,養育費の支払いをしないために給与の差押を受けたものです。差押を受けた後に,支払う側が退職したというもの,任意の養育費の支払いをしていない点に特殊性があります。裁判所は,こうした点を事実として認定し,差押逃れ目的であるため,こうした退職による収入の減額を考慮するべきではないとして,働いていたら得ていただろう収入を前提に養育費の算定を行うべきと判断しています。

 かなり特殊なケースではありますが,意図的な収入減少は考慮されにくい傾向にあるものと考えられます。次回に続きます。

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