法律のいろは

不倫・不貞行為と慰藉料の関係(その⑳)

2015年5月30日 更新 

 配偶者に不倫・不貞があった場合でも,不倫・不貞の相手方だけに慰藉料請求するケースはそれなりにあるのではないかと思われます。特に夫婦関係の修復などを考えている場合にはその傾向が強くなるのではないでしょうか?

 不倫・不貞による慰謝料支払いの責任は,不倫・不貞に関わった配偶者と相手方の連帯責任ですが,裁判例上連帯債務で認められている支払い義務の免除が全体に効力を及ぼすという事が,あてはありません。ですから,配偶者に対しては慰謝料の支払い義務を免除したうえで,不倫・不貞の相手方には慰謝料請求をすることはできます。もっとも,不倫・不貞の相手方のみ慰謝料を請求したことが配偶者への支払いの免除には必ずしも該当しませんが,裁判例の中には不倫・不貞の精神的な苦痛に関しては第1次的には夫婦間でその回復を図るべきとの一般論を示し,配偶者に対して慰謝料請求を免除したことから,不倫・不貞の相手方にもその負担すべき割合の部分免除したものと扱ったものも存在します。こうした考えに立つ場合には,慰謝料がある程度は減額される可能性が出てきます。

 夫婦関係が修復されることを前提にすれば,不倫・不貞の慰藉料請求に対して支払いをすれば,配偶者と相手方のお金の負担の問題となる一方で,夫婦の財布は1つという考え方もあるかもしれません。そう考えれば,配偶者に対して請求をしないことは,不倫・不貞の相手方に対する慰藉料請求にはある程度意味が出てくるかと思われます。結局相手方から配偶者に責任に応じた負担を求めることになるためです。
 こうしたことは,この種の不倫・不貞による慰謝料請求に対する対応(減額を求める理由)の一つにおなり得るものでしょう。

 同じことは,不倫・不貞による慰謝料の支払いを相手方から相当高額に受けた後(逆に配偶者から離婚等の慰謝料の支払いを受けた後)に,他方の不倫・不貞の当事者に対して慰謝料請求を行う場合にも考えられます。これは,不倫・不貞の相手方から相当高額な慰藉料の支払いを受けた後に,配偶者にそのことには含みきれない離婚を余儀なくされたことの慰謝料がある(主な離婚の原因は不倫・不貞行為)場合に,十分支払いがなされていると考えられるケースがある点にも該当するものと考えられます。

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