法律のいろは

財産の大半を相続させる代わりに,配偶者の面倒を見てもらう方法はあるでしょうか?

2015年6月29日 更新 

 遺言で,財産の大半を家業を継ぐ方に渡し,かつ自分がなくなった後に生きている配偶者の方の面倒を見てもらう形はどんなものがあるのでしょうか?今回はこうした話について簡単に触れていきたいと思います。

 こうした事柄を達成するための一つの方法として,財産の多くを渡す代わりに,配偶者の面倒を見てもらう事を【負担」の形で記載するという事が考えられます。こうした負担とは,ここでの文脈を踏まえ分かりやすく言えば,一定の財産を貰う代わりに義務を負うという事だと理解しておけばいいかと思われます。こうした義務は,法律上も事実上も可能なものでなければいけませんが,財産を与えることと関係のない内容でも構いません。いわゆる面倒を見る・扶養するとはその内容が抽象的な話になりますから,これで義務を課したといえるのかどうかが争われた裁判例が存在します。

 そこでは,「同居して身の回りの世話」をすることが通称的ゆえに「負担」と評価できるかが争点になりましたが,「負担」と評価することに特に支障がないとの判断がその裁判例ではなされています。そのため,扶養をするなどの話が,負担を課したものと考えても問題は多くのケースではないでしょう。単なる希望を述べたものなのかとの境界が場合によってはあいまいになることもありますので,先ほどのケース程度には記載をしておく必要があるでしょう。

 

 ただし,財産を与える範囲内で義務を課すことができるだけですので,全く財産を与えないとか・与える財産以上の義務を課すことはできません。ですから,たとえば,1000万円の財産がある方が,うち700万円を子供の誰かに与える代わりに課すことができる義務の範囲はこの金額の範囲内という事になります。

 こうした義務を課すものかどうかは純粋に文言のみで判断するのではなく,そのように解釈できるものかどうかがポイントとなってきます。今まで述べた点を踏まえて,タイトルにある財産の大半を与える代わりに配偶者の面倒を見てもらうという内容の遺言の一つの例としては次のようなものが考えられます。ただし,こうした遺言を残す際には,その他のさまざまな問題をクリアできるかどうかのチェックも重要かと思われます。

 一例として,所有する建物と1000万円の現金を子供の一人に渡す代わりに,配偶者の面倒を見てもらう文言として「遺言者は,子供Aに建物(どの建物かはっきりさせることが必要です)と現金1000万円を相続させる。子供Aは,前記の相続の負担として,配偶者Bと同居して,必要な生活費の負担等をして扶養する。」というのが考えられます。なお,ここでの文言は,説明の便宜のために相当単純にデフォルメしたものですから,正確性を持つものではありません。そのため,実際の遺言の文言は各自のニーズに合わせ,正確を期する必要があります。

 ちなみに,こうした義務(負担)が守られない場合に,遺言書に記載された事柄の効力(生前に撤回を行うという話とは別です)が否定されるのかどうかという問題があります。この話は別のコラムで触れます。

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