法律のいろは

遺留分侵害(減殺)請求が問題になる場合に,権利行使ができるもの・できないものの自由度はどこで決まっているのでしょうか?

2015年10月27日 更新 

 遺留分を侵害するような贈与が生前・遺言でなされた場合に,一定の期間の間で遺留分減殺請求ができるという話は以前しました。どういった場合に遺留分を侵害されたというのかという話は別のところで触れるとして,今回は,遺留分減殺請求ができるもの・できないものがあるのか等について触れていきます。令和2年7月以降に発生した相続については,遺留分侵害額に当たるお金の支払いを求める遺留分侵害請求への権利の性質は変更しています。

 

 まず,遺留分減殺請求の対象は先ほど述べたように,生前・遺言でなされた贈与となります。対価を払わせても,つり合いが著しく取れていないものに関して,法律で定めがあります。こうした贈与に対して,遺留分を持っていて減殺請求をしたい方が自由に減殺請求の対象を決めることは法律上できません。

 こうした順番などは法律で決まっていました。そうでないと,相手方にどうなるか分からない・さじ加減次第ということになってしまうからです。それでは,どういう順番かといえば,まずは遺言でなされた贈与が一番最初の対象となります。そのため,こうした遺言でなされた贈与(遺贈)に対して,遺留分減殺請求をすれば十分侵害された部分を取り戻せる場合には,生前になされた贈与へ遺留分減殺請求をすることはできません。複数遺言による贈与(遺贈)がある場合には,贈与されたモノの価格に応じた割合で遺留分減殺請求がなされたのを基本とします。

 例外は,遺言でこうした割合について別な割合にしてほしいなどの定めを置いておけばかえることができます。こうした点も遺言でできる遺留分の問題への対応の一つとなります。ちなみに,よくある特定の相続人に「相続させる」という遺言がある場合には,遺言による贈与(遺贈)と同じレベルで遺留分減殺請求の対象となります。

 遺贈の次に遺留分減殺請求の対象になるのは,生前の贈与ですが,贈与をした方が亡くなった際に贈与の効力が生じる形の贈与が優先して遺留分減殺請求の対象となります。その次が,その他の生前になされた贈与になります。生前になされた贈与はそれこそたくさんありえますから,法律上,最後になされた贈与から順番にさかのぼっていく形になります。つまり,亡くなる時期に近いものから順番に遺留分減殺請求の対象となっていきます。

 このように,順番が決まっているうえに,ある特定の財産だけ遺留分減殺請求の対象とするという選び方をすることはできません。また,相手方が贈与を受けたものを売り払う等していて現物を取り戻せない場合,お金での支払いを求めることになります。相手にお金がなければ,次の順位の方には請求できないという点にも注意が必要です。

 

 遺留分減殺請求についてのこの話は,遺留分侵害請求の下でも当てはまります。お金の清算を求めるにしても,遺贈を受けた方に対してなのか・生前贈与を受けた方に足してなのかなど請求の相手方と請求額をいくらにするのか賀問題になるためです。

 遺贈⇒死因贈与⇒生前贈与という順番などは同じですので,遺贈により遺留分侵害をしている場合には,遺贈を受けた方に対して侵害している範囲で支払を求めることになります。この方への請求では遺留分侵害が亡くならない場合に次の順位の方へと請求をすることができます。請求をできる順番を遺留分に関する権利を持つ方が変更できない点には注意が必要です。このことは,先順位の方に対する請求によって理屈上は遺留分侵害が亡くなるものの,実際には請求を行った時点ではその方に支払い能力が亡くなっている場合に意味を持ちます。

 本来請求できない順位の方には,回収ができないという理由では支払いを求めることができないということになります。そのため,先順位と指定されている方から回収できないリスクは,遺留分に関する権利を持つ方が負うことになります。支払いが難しい場合の支払い期限の許与を裁判所に求める(支払うべき側)・代物弁済の合意という点はありますが,回収リスクとの関係でどういう方法がいいのかは請求する側も考えておく必要があります。

 話し合いで期限を設ける形で合意をすればその内容によりますし,それができない場合には裁判所での手続きの中で支払期限を与えられることがあります。単に支払いが遅れていると,支払いを求められた側は,具体的な金額の請求がなされた時点から支払い遅延になる(遅延損害金が法定金利で発生する)ことになるので,負担が大きくなりかねません。  

 贈与などを受けたもので支払に変える(代物弁済)も可能ですが,所得税の問題も出てきかねませんし,支払いを求めてきている側が同意をしないとできない話である点には注意が必要でしょう。支払いを求めている遺留分の権利を持つ方が回収リスクを負っている点も踏まえて話し合いをするなどして解決を図ることになろうかと思われます。

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