法律のいろは

遺留分減殺請求を防ぐ遺言は可能なのでしょうか(その②)?

2015年11月6日 更新 

 遺留分の確保を完全に防ぐ形での遺言をするのは難しいという話を全開しました。それでは対応方法が全くないかというとそうではありません。今回はそうした方法の具体例について触れていきたいと思います。遺言で,特定の相続人の方に重要な財産を含む財産の大半を与えるケースを想定していきます。

 一番簡単な方法として,重要な財産を特定の相続人の方に引き継がせるとして,他の遺留分を持つ相続人の方に遺留分相当の財産(現金や預金)を与えるという方法です。この方法は,現金や預金が十分にある場合には使える方法ですが,家や土地,その他個人名義の商売などに使うモノ以外の財産が十分にない場合には限界が出てきます。また,会社の株式であっても,事業用資産や不動産の評価額が大きな資産を占める場合には,いわゆるキャッシュがあまりないということになるでしょう。

 別のコラムで,死亡保険金の活用の話を触れておきました。保険に加入できるのかなどの問題はありますが,課税面での非課税部分や保険金の金額や遺産額との対比など判例で例外と考慮される点での門外が生じないように設定すれば,大きな対策となるでしょう。

 

 生命保険は遺言以外での対応策で,別の財産を与えることは遺言あるいは生前贈与でそれぞれ対策が可能な部分です。これ以外に,遺留分の行使をしないことや行使できる部分を制限できるかといえば,一番最初に書いたようにできません。遺留分は生活保障のため権利者に与えられた権利であるためです。遺留分の事前放棄をしてもらうことは可能ですが,家庭裁判所が権利者本人の真意かどうかチェックしますので,対策としては放棄してもらえるだけの環境面を作ることになります。権利行使をしないように求める遺言の記載自体はご本人の意向を記録に残すという程度のものになり,記載はできますが,法律上の意味は特にはありません。

 

 これ以外に,特定の遺贈や生前贈与をした方に対する遺留分侵害請求を後回しにできないかというところですが,一部可能な部分はあります。遺留分侵害請求での相手方は誰になるのかなどの問題ですが,法律上,遺贈⇒生前贈与,生前贈与の間では最近のものからというのは厳密に決められています。生前に契約で行う死因贈与は効力発生が相続開始時で遺贈と同様であるため,遺贈の次の順位と考えられています。ここでの厳密に決められているというのは,遺言で変更はできないという話になります。仮に,遺留分侵害請求を受ける順位を下げるのであれば,生前贈与を早い時期に行う(相続開始前10年より前であれば,遺留分侵害になる財産状況であるとの認識がもらう側にもなければ,そもそも遺留分侵害請求の対象になりません。ただし,後継者への引継ぎの場合など後継者も関与している場合には難しい場合もありえます)ことが考えられます。

 次に,遺言で動かすことができるのは,遺贈が複数存在する場合に,そこに順序を付ける・同じ時期になされた生前贈与についても順序を付けるということは可能です。法律上は,遺贈されたもの同士はその金額で請求を受ける・生前贈与も同様とされています。これは遺言で別に定めることができるとされているので,今述べた形の遺言での対応が可能となります。これ特に意味を持つのは先順位とされた方への請求によって金額面(回収リスクは遺留分の権利者が負います)で侵害がなくなる場合です。次の順位者への請求はできなくなるためです。

 

 遺留分については遺言での対応には限界はあるものの,生前贈与のやり方や事前放棄(中小企業や個人事業主の事業承継の場合には,民法の特例の活用)により対応できる部分はあります。

 

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