法律のいろは

遺産分割をした後に思いがけず多くの借金を亡くなった親がしている場合の対応は?

2016年2月4日 更新 

 遺産分割はプラスの財産の清算である(負債は法律上当然に相続分で分割さえる)というのが建前ですが,遺産分割協議の中ですべての内容を取り決めることは可能です。ただし,相続分と話し合いで決着された負債の内容が異なることを債権者側に反論することは原則はできません。

 

 遺産分割協議をした・相続放棄をしないということは,相応に財産があり借金がそこまで多くはないというのが全手になっているのが通常です。財産はもちろんすべての負債を確実に把握しているとは限らないので,遺産分割協議を行った後に実は多くの借金を亡くなった親(被相続人)が負っていたということもありえます。もちろん,よほど疎遠な親ではない限りは,債権者からの請求が来ることが多い(特に遺産分割協議にそれなりの時間がかかったケース)と思われますが,請求はしていなかったけれども実は負債があるということも一応はありえます。

 この場合に,その負債について時効に必要な期間が経過(亡くなった親を含めての期間経過)がしていれば,時効の主張をすることになるでしょう。これに対して,時効に必要な期間は経過していない・一部支払いがなされていたケースでは,遺産分割協議の無効・取り消しの原因があるかどうかも考えることになるでしょう。ここでの原因としては,前提事情が大きく異なっていたといえるかどうかで,その負債・借金の存在を相続人が知っていれば一般的に相続放棄を選択しただろうといえる水準である必要があります。抽象的ではありますが,金額が大きいという点はもちろん,遺産が多ければそれだけ負債が多くても遺産分割の方を選択するでしょうから,遺産の金額その他の事情(分割を選ばないといけない事情の有無)を考慮しての話になります。要はケースバイケースといえるでしょう。

 

 遺産分割行為は遺産の具体的な配分を決める行為で,相続放棄ができない場合である「処分行為」そのものにはなります。ただし,取り消しがなされつと初めからしていない扱いになりますので,取消(錯誤,ただし,令和2年4月以降の遺産分割協議のみ。それ以前は無効)ができるかどうかは重要な話になってきます。前提事情が大きく食い違っていたという点は,そう簡単に認められるものでもないので,ハードルは相当高くはなります。取り消しができたとすれば,次は相続放棄に必要な期間が経過したかどうかという点が問題になります。相続放棄ができる3か月(原則)のスタート時点が後ろからという評価ができないと,遺産分割協議がされる以前に,自らが相続人であることを協議に関わった方は知っているはずなので,結局は取り消しをしてもあまり意味がないということになりかねません。

 こちらについては,遺産や負債を知らないことを信じた・それだけの事情があったといえる場合が裁判例上要求されています。相応に生前の親と交流があり,財産や負債関係を把握していた場合には難しく,遺産分割協議をしているケースでどこまで例外となる場合があるのかは難しい話にはなります。ただし,可能性があるかを検討することは重要です。

 

 仮にこうした話が難しければ,支払いや債務整理を考えていく形になります。相続人にすでに支払い能力がない方がいた場合には,相続分に応じた支払いをした後の請求は事実上難しくなる部分が出てくるでしょう。

 

 

 

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