法律のいろは

遺留分減殺請求に対して,時効で全て取得したと反論することはできるのでしょうか?

2016年1月17日 更新 

 たとえば,今から15年前に親から土地を贈与してもらい,今年親が亡くなりました。親には他に財産がなく,兄弟から遺留分減殺請求をするという通知が来ました。これに対して,土地は時効ですべて得たので応じる必要はないと反論できるのかという話です。

 結論から言えば,最高裁の判断があり,こうした反論はできません。遺留分の範囲内でその兄弟と土地を共有することになり,解決には別の手続きが必要となります。お金で支払うとか現物で分けるという方法になります。詳細は別途触れます。

 こうした話が出るのは,遺留分減殺請求は法律で定められた期限内に行使された場合には,当然に効力が出ます。このことを防ぐために,時効で全部得たといいたいという希望が出るためです。贈与を受けたのであれば,自分のものと信じていたのだから,というのもその背景にあるでしょう。

 しかし,これをそのまま認めると,生前贈与に対して遺留分減殺請求ができなくなる可能性が高くなり,遺留分減殺請求という制度の意味がなくなります。法律上,遺留分を侵害することを知りながらなされた贈与への遺留分減殺請求はいつまでもできるとされているのと矛盾する点も出ます。

 このような点等を考慮して,最高裁の判断では,こうした時効の主張で反論することは認めないと述べています。このケースでは,遺留分減殺請求の際の遺留分をそのように計算をしていくかという判断もなされています。

 もっとも,実際には,贈与がなされたのかどうかが問題になるケースもありえます。贈与の契約書を作っていないケースも十分ありうるからです。ちなみに,法律上もこうした契約書類を作らない形の贈与も認めています。

 このような場合には,そもそも贈与契約があったのかどうかが問題になり,立証ができない場合に備えて時効の主張がなされることがあります。贈与がない場合を前提にしますから,この場合には先ほどの最高裁の判断が当てはまるわけではない点に注意が必要でしょう。

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