法律のいろは

遺産分割協議の後,認知を認める判決が出た場合でのお金の請求(価額支払い請求)とは?

2016年2月29日 更新 

 認知が問題となる場面の一つに,遺産分割の場面があります。これは,亡くなった方の相続人になるには法律上の親子関係が必要なため,認知をする方がいない死後の状況では強制認知の裁判が問題となるためです。

 法律上は,遺言でも認知を行うことができますが,成人を認知する場合にはその相手の同意が必要です。認知の効力は相続発生の時点で生じます。遺言執行者が認知届を出すなどの対応をすることになります。遺言があるケースなので,遺産分割ということはあまり考えられませんが,相続人や遺贈を受けた方が全員同意をする場合には遺産分割協議も基本的にはできます。この際の協議には,認知を受けた方もくわくぁる必要があり,先ほどの同意も必要になるのが通常でしょう。

 これに対して,相続開始後に認知をされた(ここでは認知をする方がいないため,強制認知の訴え,相手は検察官で請求を裁判所に認めてもらう必要があります)方がいた場合に,他の相続人が遺産を一部でも処分したという事柄があれば,お金の支払い請求ができるとされています。ポイントとなるのは,お金以外の財産があっても(家や土地等),お金の請求だけができるという点です。これは,後で生じた事情で遺産分割の効力に影響を与えると,その後の財産関係などの動きに影響を与えかねないために避けるとともに,認知をされた方にお金の請求ができるようにして利害の調整を図る趣旨とされています。ここで効力が維持されるのは,遺産を分けたということ以外にも,遺産となる財産を売却してお金を得たということや相続分の譲渡なども含まれます。

 お金の請求をできる相手は相続人に対してになりますが,各相続人が取得した財産の評価額に応じてになります。負債についてはここでは考慮されませんが,認知された方も相続分に応じて当然に負債を引き継ぐ形になります。ここでの支払いべき金額を決めるにあたっては遺産分割における調整要素である寄与分も考慮対象にはなるとされています。

 

 そうなると,相続が開始してから認知をしてもらう・認知をしてもらってからお金の請求をする,という事が必要になりますので,時間がかかる可能性があります。先ほど触れましたように,認知の裁判を行う必要がありますから,相当な時間がかかることも多いでしょう。その間に遺産分割協議をされるなどして遺産の一部が減るなどの事柄が存在していた場合には,いくらを基準に請求できるかは大きな問題です。

 たとえば,相続開始時には1千万円あった遺産が,その後500万円に減っていたのであれば基準をいつにするのかによって大きな違いがあります。最高裁の判断が存在します。

 問題となったケースは,判決文からわかる範囲内では,まさに亡くなった方の遺産の分割などがなされていたために,強制認知の裁判の後にお金の支払いを求めた際に,いつを基準にするかが問題になっています。

 結論から言えば,お金を実際に請求する時点(一番遅い時点になります)を基準にすると判断しています。その根拠として,法律の先ほど述べた定めは,既になされた遺産の分割などを活かしたうえで,認知された方にもお金を確保しようという公平のための制度であることをあげています。請求時点での遺産の額を基準とすることでこういった公平を図るのであると述べています。遺産分割の時を基準にすると,先行する遺産分割とは基準が一致しますが,その後の財産変動によって支払請求をした方・」された側の一方に利益や損失が出るということから,公平に反するとしています(このほかに,遺産分割で取得した不動産を使ってその後賃料を得ていることもありうるでしょうが,ここが反映されないという点もあります)。

 この裁判でもそうですが,強制認知の裁判にはそれなりに時間がかかります。なお,先ほどの裁判では認知の裁判が確定した後請求までの間に半年程度の時間が空いているようです。ちなみに,請求をした時点から遅延損害金が生じていくことになります。

 

 最後に,価額支払い請求に応じた後には,相続により取得したお金が減っています。仮に相続税の支払いをすでにしている場合には,事後の事情による変更で「更正の請求」という相続税が支払いすぎと認められる可能性があります。期間の制限に注意をして対応をしておく必要があります。

 

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