法律のいろは

遺留分減殺請求と遺産分割協議の関係(その①)

2016年5月12日 更新 

 遺言で遺産分割の方法(相続分が指定されている・「○○に□□を相続させる」など)が指定されていても遺産分割協議をすることはできます。遺言でほとんどの財産を貰えない場合には,亡くなった方の子供など一定の方は遺留分侵害(減殺)請求を行う事は考えられます。遺留分侵害(減殺)請求は法律上期間の制限があります。遺留分減殺請求は一定の取り分を確保(法改正による遺留分侵害請求は生活保障の趣旨もあって,遺留分を侵害している部分に対応するお金の確保)するものですが,遺産分割協議は具体的にどの財産をとるのかを決めるもので,大きく異なるものです。

 

 遺留分侵害(減殺)請求の請求ができる期間内(相続開始と遺留分を侵害している遺贈や生前贈与などが存在することを認識してから1年以内あるいは,相続開始まら10年以内)にはっきりと行使する旨を言っていないが,遺産分割協議は申し入れた場合に,後で遺留分減殺請求ができるかどうかは,一定の取り分を確保できるかどうかで大きな意味を持ってきます。特に,話し合いがつかない場合に一定の取り分(お金)を確保できるかどうかは,期間制限を超えているかどうかで全く話が変わりかねません。

 

 この問題については最高裁の判断が示されており,一定の範囲内で遺産分割協議を申し入れたことは遺留分減殺請求をするという意思を含むと判断しています。ただし,本来遺留分侵害(減殺)請求と遺産分割制度ではその性質が大きく異なるものです。遺留分侵害請求は,生前贈与や遺贈などが有効であることを前提に遺留分に対応する取り分を確保するために,侵害額についてお金の支払いを求める(ここで権利行使を行い)ものです。これに対し,遺産分割協議は,存在する遺産について分割方法や内容を取り決める相続人の間の話し合いを前提に,まとまらない場合に家庭裁判所での調停や審判での解決を図るものです。そのため,性質が大きく異なるので,遺産分割協議の申し入れに当然に遺留分侵害(減殺)請求の意思を含むとは言えない点があります。

 

 問題となったケースでは,亡くなった方が遺言を残しており,そこでは特定の方に財産を全て渡すと書かれており,死後しばらくして,他の相続人が遺言を知ったというものです。他の相続人は遺留分を法律上認められている方でした。遺言の存在を知った後に遺産分割協議を申し入れる手紙を内容証明郵便で送り,その後遺留分減殺請求を行う旨の手紙を送りました。内容証明郵便の場合は相手に不在配達の書類が残るとともに一定期間郵便局で保管されています。

 

 遺留分減殺請求の手紙を相手方が受け取っていなかったために問題が生じています。前提として,遺留分減殺請求は,この場合で言えば遺言での財産配分では遺留分に該当する部分を確保できないことを他の相続人が知ってから1年以内に行使する必要があります。

 

 問題となったケースでは,遺産分割協議の申し入れに遺留分の話は書かれておらず,遺留分減殺請求の手紙が法律上届いたという扱いにならない場合には,先ほどの期間制限を超えてしまいます。そのため,遺留分で確保されるべきものが確保されないことになりかねません。また,遺言での相続分がゼロとされている方が,相続分が存在することを前提とした遺産分割協議を申し入れるのは通常の話とは異なるところがあるため,遺留分侵害を理由としたお金の請求をこ遺産分割協議の中で求めているといいやすいという事情がありました。

 

 こうした事情から,このケースでの事実関係において

 

 ①遺産分割協議の申し入れに遺留分減殺請求の行使が含まれていると言えるか

 ②遺留分減殺請求の手紙を内容証明郵便で送ったものについて,法律上届いたと言えるか

 

 が争点になっています。②については法律上届いたと言えれば,期間制限内に遺留分減殺請求をしたと評価できるため争点の一つとなりました。

 

 このケースについては第2審の判断が最高裁で①・②とも覆されています。次回に詳しく触れます。

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