法律のいろは

遺産分割協議が無効や取消ができる場合はあるのでしょうか(その②)?

2016年7月3日 更新 

 せっかく行った遺産分割協議が無効になる場合(前提事情での思い違いについては,令和2年4月以降に行われた遺産分割協議では取り消しが出w切るまでは有効という扱いにかわりました。それまでの協議については当然に無効という扱いです)について前回触れましたが,今回はその続きです。前回は,相続人の一部が様々な事情で協議に参加しなかった(できなかった)場合や詐欺行為などが存在した場合についての話を触れました。これ以外にも遺産分割が無効になる場合があるかどうかを今回は触れていきます。

 

 遺産分割協議は,一部の相続人から分配案が提案されてそこに同意をするのかどうかが問題になることがあり得ます。この場合,提案した側は早く合意をしてほしいと思うことが考えられます。その原因は様々考えられますが,自分だけに極端に有利な内容で合意をしてもらおう(署名と押印をしてもらおう)と考えて,相手に有無を言わさず署名と押印をして合意の形を作るということも想定できるところです。

 この場合に,十分内容を検討できなかったのに不公正だという気持ちが相手方に出てくることがあるかもしれません。裁判例の中にも,提示した内容を十分検討する時間を与えず,その他相続人を合理的とはいいがたい形で一人ずつ話し合いの場に呼ぶなどして異議を出しにくい形で合意を成立させたケースについて,遺産分割協議の名に値しないと判断したものが存在します。分割内容が不公平であったケースです。信義に反してなされた合意である点を理由とするものですから,ケースごとの事情にもよりますが,どの場合でも当てはまるものではないと考えられます。

 

 また,そもそも遺産分割協議がしたとは言えないと評価される場合にも当然のことながら,無効ではないものの遺産分割協議で話がついたとは言えなくなります。遺産分割協議には,実際には一堂に会して話をつけるというよりも,合意書を回して納得してもらうという形もあるかと思われます。このこと自体には問題はありませんが,一部の相続人については一部の合意内容が示されていない場合には,当然合意があったとは評価できなくなります。こうした点を問題とする裁判例も存在します。

 

 このほかにも重要な遺産が分割対象から外れていた場合に遺産分割協議が無効(取り消し可能)であると判断する裁判例もあります。問題となったケースでは遺産分割協議の対象となった財産以外に大きな財産はなかったという前提の下で遺産分割協議を行った後になって,多額の財産の存在が明らかになったケースです。こうした前提に大きな齟齬が存在して,実際に行った遺産分割協議を当初の前提と異なるなら行わなかった事情が存在する場合に,遺産分割協議の無効(令和2年4月以降の協議では取り消し可能)を認めたものになります。

 

 このように,遺産分割協議の無効あるいは取り消しができるのかが問題になるケースは様々あり得るところです。このほか,一部の財産が遺産分割協議から漏れている場合は十分ありえますが(すべての財産を相続人が調査するのは限界があるため),原則は追加での遺産分割協議を行うことになります。遺産の評価が遺産分割時点と見込み違いがあった場合(骨董品が偽物である・財産評価の誤りが存在したケース・遺産が実は他人のもので遺産ではないものが含まれていたケース)には,前提事情の思い違いであるとされる場合のほかに,相続分に応じて見込み違い違いにより確保できなかった部分の賠償として相続人の間で対応するということも会いうるでしょう。ちなみに,ここでの相続分が法定相続分なのか・遺産分割での調整後の具体的な相続分なのかについては見解の対立があります。

 

 

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