法律のいろは

相続させるとの記載をする遺言の注意点(その③)

2016年10月10日 更新 

 同じタイトルのその②で触れた話の続きとなります。重複箇所がありますが,子供に「○○を相続させる」と遺言で書いていた場合に,その子供が亡くなった場合に,その子供の子供(孫)に引き継がせるにはどうすればいいのかという話です。

 詳しく言えば,自分の中にある特定の家や土地をそこに住んでいる子供に相続させたいと考えている・もし万が一自分がその子供よりも早く亡くなった場合には,孫(その子供の子供)に,その家や土地を譲りたい場合に,どうすればいいのかとという点です。

 

 結論から言えば,この話を遺言書に明確に書いていけばいいという話になります。その方法としては,ご自身で遺言を書くのでもいいし,公正証書にするのもいいでしょう。また,最初に,その子供に相続させるという遺言を書いたうえで,もし,その子供がご自身よりも先に亡くなった場合に,もう一度遺言書を書き換えるという方法でもいいでしょう。

 別のコラムでも触れましたが,明確に描かれていない場合(単に「○○を□□に相続させる」)には,先ほどの孫に引き継がせたいという意向を読み取れないというのが原則です。もちろん,他の事情から読み取りが可能になることもありえますが,ケースごとの特別な事情を拾い上げる必要があることと実際にどうなるのかの予測がつきにくいこと(原則読み取れないという話を全手に話し合いが進み,決着がつかないのであれば裁判解決を考えることになるけれども,そこでもどうなるかは事情のくみ取り方次第である)が欠点となります。

 原則通りであれば,一般的な相続と同じく,本来その子供に相続させようと思っていた遺産も法定相続分を考慮して,遺産分割協議をする形になります。代襲相続により孫が参加しても,その取得には別の財産をあきらめる・お金を出す(代償分割という方法,課税面も含めて考える必要はありますが,希望が大きい場合にはやむを得ないという面はあります)などの対応が必要になります。

 明確にする内容は,「○○を□□に相続させる。ただし,□□が私よりも先に死亡した場合には,○○を△△に相続させる」などの話になろうかと考えられます。詳細は個別のケースに応じて考えることになりますので,その際に専門家にも相談をしつつ考えた方がいいでしょう(もちろん,本を見て考えるという方法もあります)。先ほど述べたせっかくの意向が反映できないことや,意向通りに孫が動こうとするとお金その他での負担が余計に出る可能性がある点を考慮しておいた方がいいでしょう。

 

 ただし,遺言書を作ろうとしても作れない場合は,出てきます。今はお元気でも,書き直しが必要になった際には,遺言を書けるような状況ではない健康状態になっているかもしれません。そのため,仮に書き直したいというご意向があるのであれば,早めに対応しておいた方が無難です。健康状態(厳密には判断能力)が低下した状況では後で書き直した遺言自体の有効性が問題になることも事情によっては生じかねません。

 そして,すべての財産について個別にこうしたいという意向や負債の負担内容についてこうしたいということがあれば,財産の内容や誰に何を配分するのかについては明確化をしておいた方がいいでしょう。ここでの注意点は,例えば,預金について残高まで書いてしまうと,残高が変動した場合に特に増えた部分についてはどうなるのか(指定がされていませんので,遺産分割の対象になります)など思わぬ落とし穴があるというところです。どこまで特定して書けばいいのかという話になります。

 遺言を書く際にはせっかく意向を実現するにはどうすればいいのかを考えておく必要があります。

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