法律のいろは

生前に財産の援助を受けたことが相続問題でどのように問題となるのでしょうか?

2016年11月23日 更新 

 生前に亡くなった親から援助を受けたことが相続・遺産分割の際に問題となる話は以前触れました。今回は,どうしてこうした事柄が問題・トラブルになるのかを触れてみたいと思います。

 

 一番の理由としては,こうした援助,特に贈与が多くを受けてきたことは,金額によっては遺産の先渡しの意味合いを持つこともあり,相続人の間で不公平感を招くことが考えられます。税務面では相続税あるいは贈与税の課税の問題がありますが,暦年贈与(年の合計非課税枠が110万円)を使うにしても相続時精算課税制度(適用できる場合に限定があり,結局は相続時に相続税で課税を考えるため,メリットがあるのかどうか考える必要があります)を使うのであれ,贈与税は税率が高いという問題があります。相続税についてはここでの税額軽減などが図られる場合もあります。詳細は別のコラムで触れます。

 対応として,遺言でこうした場合の調整を行わないように意味を持たせることができる話を触れましたが,あまりに贈与による先渡し分が多い場合には,遺言でも対応が難しくなる可能性のある遺留分と呼ばれる最低限の取り分の話が出てきます。

 

 こうした援助や贈与がそもそもあるのかどうかも問題には十分なりえます。後々でも記録の存在する家や土地の場合には贈与があったのかどうかは比較的はっきりとわかりますが,長い間での金銭の援助をしてきたという点は,通常はそんなに証拠が残っていないことも十分にあり得るところです。証拠がない場合には,像の世の有無や金額が争いになった場合に,指摘した贈与・援助を前提に話を進めることが難しくなります。そもそも,特に調整を必要とする援助といえるかどうか(例えば,学費の援助ということになると親が子供に対して負っている扶養義務の範囲内だから調整は不要ではないかという話)という問題も出てくることもあります。扶養義務の範囲ということであれば調整は不要になります。

 相続人の間でお金の動きについて争いがない場合には調整をどのように行うのかという話だけになります。ただし,先ほど触れた扶養義務の範囲内あるいはすべての子供に同じく援助していた(結婚式その他の費用など)場合には,特に調整は不要という話になるでしょう。

 はっきりとしたお金の流れを示す証拠が残っていない場合には,調整の話の前提を書いてしまうということになります。こうしたお金の流れがあったはず,資金の援助や贈与があったはずというだけでは,調整の対象が相続人の間ではっきりとせず,話し合いが難しくなることがありえます。また,こうした場合には調整不要であるという方向に話が向かいかねません。

 

 中には,兄弟姉妹がそれぞれ親から援助を受けていたものの,その内容に大きな差があったために後で不公平感が兄弟姉妹の間で生じてトラブルになる可能性もありえます。こうした場合にどのように調整を図っていくのかは面倒な問題となってくるでしょう。

 

 ことに,親が亡くなった後に,こうした援助や贈与の差が明らかになって不公平感が出た場合には,大きなトラブルになる可能性があります。こうした問題が起きる前に親族間で情報共有をするのも一つの方法ですし,親の方からは遺言や保険などでの対策を早めに立てておくというのも一つの方法でしょう。

 問題がそれでも起きてしまった場合には,どうすればいいのかは様々な情報収集とともに専門家に相談して考えてみるのも一つの手と考えられます。

 

 

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