前回,預貯金が遺産分割の対象になるかどうかで起きる違いに関して触れました。今回は少し話を戻して,裁判所の判断で触れられていた定期預金が遺産分割の対象となる,つまり,当然に分けられるわけではないという点について触れていきます。
前々回に触れましたように,裁判所の判断では,定期預金の性質などに照らして判断をしています。これは通常預金・普通預金に関する判断でも同じでしたし,ここ数年同じように遺産分割の対象になるのかどうかが問題となった他の財産についても同様な判断がなされています。
ここで問題となっている定期預金は,ゆうちょ銀行の定期預金になります。そのため,判断の中ではその前身となる定額郵便預金に関する決まりや性質について触れたのちに,郵政民営化後の性質の変化について触れています。
そこで触れられている性質などとは,一定期間を預けることにしてその期間が過ぎる前には原則として預金の払い出しができないとされていることが挙げられています。また,こうした性質があるために定期預金の金利は高めに設定されているととらえており,定期預金における重要な要素として,満期前の払い戻しの制限を考えています。
また,その理由として,他の金融機関の定期預金と同じく,預金の管理を容易にして関係する事務の定型化や簡素化を図ろうとするものであるとしています。
このほか,契約上,預金の一部のみを払い戻すのが制限されているという点があります。
このような性質などがあるにもかかわらず,定期預金が相続が発生した後に相続分に応じて分けられるとすると,一体いくらの金額があるのかを利息を含めて計算するのが面倒になるという点が出てきます。また,先ほど触れたように,預金の一部だけを払い戻すことが制限されているという面がありますので,分割されたとことを前提に各自が払い戻すのができません。
裁判所の判断では,こうした定期預金の要素を踏まえて,遺産分割の対象にならない,相続分に応じて当然に分けられるのはおかしいととらえて,遺産分割の対象になると判断しています。
このような判断を裁判所は示していますが,このほかに各裁判官が見解を示している点があります。そこでは,緊急時に相続人全員の同意がない場合でも払い戻しをする必要がある場合にどのような対応があり得るのかといった話などが示されています。いずれにしても,この裁判所の判断は今後の遺産分割協議に影響を与える点はあるものといえるでしょう。
この最高裁の判断が出た後平成30年に民法改正願され令和元年7月に施行されています。そこでは,遺産分割の際に家庭裁判所の裁判官の判断が介在する審判前の保全処分の判断基準の緩和(この制度では上限額はありませんが,遺産分割調停や審判の申し立てもされていることが前提で,必要性の判断は裁判官の裁量判断になります。要は払い戻しがどこまでできるのか・できるのかはケースバイケースになります)が設けられました。また,家庭裁判所が介在されない制度として,仮分割の制度(上限の枠と金額が設けられています)が設けられました。こちらは使途が問題になりませんが,取得したお金は遺産分割ですでに取得した扱いとなり,残りの話を遺産分割協議などで行うことになります。
遺産分割での解決までは時間がかかるケースもありえますので,こうした制度の活用も考えていくことになるでしょう。
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