法律のいろは

遺産分割で取得した財産について,後で遺産ではない・評価が大きく下がる事情が判明した場合の対応とは?

2017年10月25日 更新 

 遺産分割協議をする場合には,その時点で明らかになっている事情に基づいて具体的な財産の取得に関して話し合いをします。そこで決着がついたのちに,例えば,一部の遺産が実は他人の所有物(遺産には含まれない)ことが判明した・建物を取得したものの,基礎工事に重大な問題があることが判明した・美術品を取得したものの後で偽物であることが判明したという場合です。この場合には,遺産分割協議の前提事項に思い違いがあったといえれば,取り消しをしてやり直す(この場合には新たな課税の話は出てきません)が,実際に必ずそう言えるとも限りません。

 このほか,こうした問題の対応として,相続人の間の負担の問題(担保責任)として対応をする(負担を負う)ということもありえます。

 

 ここでの負担とは,遺産分割協議で確保した財産価値が実際には確保できていなかったことが判明した(先ほどの建物の構造欠陥も遺産分割協議の際に存在している必要があります)場合にその損失・損害の補填をどうするのかという問題です。法律上は,各相続人は自らの相続分の割合に応じてその負担を負うとされています。ここでの相続分は法律で定められている法定相続分を指すのか・特別受益などを調整した後に遺産分割協議で取得した分に応じた部分(具体的相続部分)を指すのかという問題がありますが,実際に取得した割合に応じてということですから,後者の考え方をとっていくことになります。

 法律上は売買の契約の売り主と同様の責任としていますが,実際には,財産価値を確保できていなかった方が代償金を支払う義務を負っていたのであれば,その軽減を行うことになります。損失・損害の補填については,現在確保したものの財産価値と本来確保すべきであった財産価値の差額ということになります。建物の基礎に構造欠陥があった場合の評価額と遺産分割協議の際に取得した評価額の差額であったり,他人の所有物で移転が難しい場合にはその評価額部分ということもありうるでしょう。遺産分割協議の解除はできません(法律上義務の不履行と同様に考えるとされていますが,遺産分割協議では義務の不履行の解除は認められていないため)。また,他人の財産の権利移転や修理などの行為も請求できないと考えられています。

 注意点は,売買の契約の売り主の責任については法律上短い期間制限が存在します。ここでの負担を補填する話も同様の期間制限が存在しますから,負担を負うとしても実際にはその請求ができなくなることがありえます。

 

 このほか,ここでの負担を負う相続人の中で支払い能力を持たない相続人がいた場合には,原則として,その方を除く相続人が相続分に応じて負担を負うとされています。負担を求めた側の相続人も相続分に応じて回収できないリスクを負うことになります。

 今述べた負担に関する法律のルールは遺言で変更をすることができます。あくまでも遺産分割で取得するものについての話ですので,遺産分割協議を想定できないケース(すべての財産が生前贈与や遺言で遺贈しているケース)では話が異なります。その場合でも遺産分割の余地がある場合(遺言で実はすべての財産の帰属が決まっていない場合)には決めておくこともありうるでしょう。

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