法律のいろは

婚姻費用と住居費(その②)

2014年8月24日 更新 

前回,別居している夫婦が

  ①夫が出て行って,今も住宅ローンを払っている家に妻と子供が住んでいる

  ②妻が子供を連れて出て行って,実家で家賃を払わずに生活している

の場合に,婚姻費用(生活費)がどのように算定されるべきかについて,特に①を少し触れました。

 

 確認する点ですが,住宅ローンの支払いを負担しているから直ちに全額を婚姻費用から差し引くというものではないという点です。あくまでも,住宅ローンの支払いをしていない側(前回の例では妻)が家賃の支払いもなく住んでいる場合には,いわゆる算定表や算定式で負担することになる住居費を払っていないため,調整の必要があるという話です。

 ですから,住宅ローンの支払いをしていないけれども住んでいる側が家賃を払っているようなケース・前回の例において,妻の側も家を出て家賃を払っての借家暮らしをしているようなケースでは,調整の話は出てこないという点には注意が必要です。

 

 問題はどこまで婚姻費用から差引することができるかという点です。前回も触れましたが,住宅ローンを全額差し引くということは認められないのが原状です。前回の話に補足すれば,住宅ローンの金額が住居費よりも高額であるのが通常というのが大きい理由です。あくまでも,婚姻費用で差引が問題になるのは住居費です。婚姻費用を考えるうえで,収入ごとに算出される住居費(これをもとに算定表や算定式での婚姻費用は考えられています)を超えて減額することは考えられません。つまり,住居費の中でどこまでの差引を認めるかというのがここでの問題です。

 ちなみに,考え方としては,今述べた住宅費から差し引く方法以外にも,住宅ローンの支払額を特別経費とみて算定式を計算するという方法もありえますが,差引について触れておきます。この場合も住宅ローンの一定割合を差し引く・住居費から一定額を差し引くという方法が考えられます。

 

 

 裁判所の審判例などを見ても,必ずこの割合を控除する・この金額を控除するということはなく,様々な事情を考慮して差し引く割合や金額を決めている例が多いように思われます。中には,算定表の幅の中で考慮するという考え方もあります(ただし,すべてが算定表の幅で考慮すればいいというわけでもありません)から,一つの考え方により決まるわけではありません。疑問点などがあった場合には,専門家にあたるのも一つの方法かもしれません。

 

 次回に続きます。

 

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