法律のいろは

遺産(相続財産)に含まれる不動産の換価や代償分割とは?

2015年5月15日 更新 

 遺産の中に,自宅の土地や建物そのほか畑など不動産が含まれているケースはそれなりに多いように思われます。そうした不動産以外に預貯金等がある場合はともかく,不動産しか目ぼしい財産がない場合には,その財産をどう評価するか・どう処分するかが問題になることもあります。特に,たとえば,相続人の方のうちの一人がそうした遺産に含まれる家に住んでいるのに対して,他の相続人が別に住む家がある場合には,家の価値をどう評価するかは大きな問題になることもあります。

 この場合,遺産を分けるのに,何かしら相続分を修正する要素がなければ,家の価値に相当するお金を相続分に応じて分けることになりそうです。ただし,家に住んでいる相続人がその家に住み続けることを希望した場合には,その方は他の相続人に相続分に応じたお金を配分する必要が出てきます。そのためのお金を準備しているとか,他の遺産に含まれる預貯金で調整が出来れば問題はなくなってきます。家しか目ぼしい遺産がない場合には,その家の評価額によって配分するお金の金額が変わってくるため,どう評価するかが大きな問題となってきます。この点での調整がつかない場合には,そもそも家を処分するかどうかも問題となってくることがありえます。

 

 先ほどのケースでは,家を取得する側は評価額を低くしたいでしょうし,お金の配分を受ける側(前提として家は必要ないか必要性が低い方)にとっては高い価格で評価してほしいという事が言えるかと思われます。不動産の評価方法として,公表されている固定資産税の評価額・公示評価・路線価といったものを基準とする方法,不動産業者の簡易査定を参考にする方法・不動産鑑定士の方の鑑定に基づくものが考えられます。このうち,不動産業者の簡易査定とは,あくまでも不動産業者が売却にあたり予測見込み額を評価することで,厳密な価値の評価とは言えないことも十分にありうるところです。ただ,費用がかからないために利用されることが多い点はあります。これに対し,不動産鑑定士の方の鑑定評価は,専門家による不動産の経済的価値を鑑定するもので,評価の正確性がありますが,費用はその分かかります。

 そもそも,取得の方法についての希望が代償金を支払って家を取得するという代償分割という方法か・売却をしてお金の清算をするという換価分割かちょい雨天で対立が出てくることもありえます。換価分割を希望する側にとってはお金を確保できればいいというところですから評価面の対立は大きくなります。他のコラムでも触れていますが,どれかの取得できる資料による評価を採用するか・査定の中間額を採用するかは相続人の合意次第です。評価面での合意が難しい場合には鑑定になりますが,換価分割の場合には最大額の査定(ただし,売却までかかる期間も重要な場合もあります。早めに換価を終了したい場合です。換価までを終えてからお金を清算して合意をする・そうした内容の審判の場合)をした業者にするのが通常と思われます。お互いの対立が大きく調整も難しそうなケースでは,換価と清算まで終えるということもありえます。分割の方法として,お金がない場合に負債の支払いを負担することをすることを代償金の内容にすることも可能です。

 遺産分割調停など家庭裁判所の手続きでは,こうした債務の負担を家の取得を希望する方にさせる形での分割をする場合に採用するのは「特別な事情」のあることを法律上要求しています。こうした事情として,現物分割が不可能である・分割するとその後の財産の経済的価値が下がる(一方が接道をしないとか,形に問題が出てくる場合など),家で生活している方などその方の生活や利用状況を守る必要がある場合・債務負担をするなど代償金支払いについて相続人の間で争いがないケースなどが想定されています。ただし,債務を負担するといっても,その支払いができない財産状況の方に負担をさせても,他の方の公平に反しますので,そうした場合にはこの方法は取れません。普通,同意をしないでしょうし,裁判例上も否定されていますので,裁判所の手続きでの実現も難しいでしょう。

 そのため,評価額だけでなく家の取得希望を持つ方自身の支払い能力からみて,負担可能なのかどうかか・難しいならばどのような方法が可能なのかを考えていく必要があるでしょう。

 

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