法律のいろは

離婚後の養育費(その二十五)裁判例の紹介

2014年1月13日 更新 

 離婚後の養育費に関して,今回はやや特殊ですが,数年前に出された最高裁の判断を紹介したいと思います。

 

 まず,前提として,以前このコラムで触れましたが,結婚後200日経過後から離婚後300日以内に生まれた子供は,結婚していた(離婚した)夫婦の子供と原則推定されます。例外は,子供を母親(妻)が妊娠する可能期間に性的交渉を夫婦で明らかに持ちえない事情が客観的に存在する場合です。たとえば,事実上の離婚状態とか配偶者が外国に行っていた場合です。ですから,状況によっては実際には血縁がないのに夫婦の子供と推定される場合があります。面倒な点は,今述べた推定を否定するには,子供の出生を父親(夫)が知ってから1年以内に親子関係の推定を否定を求める裁判を起こす必要があるという点です。

 簡単に言えば,この1年以内に裁判を父親(夫)が起こさない場合には,血縁上は親子ではないものの法律上実親子関係(養親子関係ではない)が生じるケースがあります。

 

 問題になったケースはこういった場合にあたるわけですが,以下のような事情がありました。

 ①夫婦間の子供に夫の子ではない子供がいました,妻は出産2か月後にはそのことを知っていたものの夫に告げていませんでした。そのため,夫は先ほどの裁判を起こせませんでした。

 ②夫が離婚に至るまで血縁上は自らの子ではない子供の養育監護のための費用を含めた婚姻費用を払ってきました

 ③離婚によって妻はかなり多くの財産分与を受け取ることができる

 

 問題となっている子供の親権は母親(妻)がとることを前提に,父親(夫)が養育費の支払いを(どこまで)する必要があるかが争点となりました。最高裁は,

 ・②の事情から夫は十分な負担をこれまでしてきた

 ・法律上の親子関係を①の事情から否定できなくなった

 

 点から夫に今後問題となっている子供の養育費を負担させることは過大な負担になるとし

 ・③の点から養育費を受け取れなくても,妻(母親)には養育監護費用を負担できないことはない

 として,父親(夫)の養育費の支払いを母親(妻)は求められないと判断しています。

 

 ただし,あくまでも先ほどの事情があるからということで,権利濫用(養育費の支払いを求めることは本来できるけれども,例外的にはできない事情があるから求められない)にあたるとしています。ですから,血縁上は自分の子ではなくても法律上実親子関係がある場合には,養育費の支払い義務は原則出てくる点に注意が必要です。

 この事情のうち,例外にあたるにはどれだけの事情が必要かという点は問題になりますが,夫婦それぞれの金銭負担に関する事情の考慮や親子関係が否定できなくなった経緯が考慮されています。そのため,かなり例外的なケースに関しての判断であると考えておいた方がいいと思われます。

 

 次回に続きます。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。