法律のいろは

離婚と財産分与(その30)

2014年1月27日 更新 

 以前,離婚の際に,財産分与の資料を集める方法として,

 ①弁護士会照会

 ②調査嘱託(文書送付嘱託等)

 があるという話をしました。①は弁護士が付かう方法(所属する弁護士会を通じて)・②は離婚調停や離婚裁判で裁判所を通じて行う方法です。相手の財産がA銀行のB支店にあるはずだけれども,弁護士に頼まず,裁判所も使わずに開示してもらえないかと思う方もいるかもしれません。今回は,そうした事が可能かについて触れていきます。

 

 まず,話合いがスムーズに進み,相手方も協力的に資料を開示してくれるのであれば,何の問題もありません。問題は,相手方が財産の開示(通帳や取引履歴の開示)に協力してくれない場合です。この場合に,自分は配偶者という理由で金融機関は開示してくれるでしょうか?

 結論から言えば,極めて難しいことになろうかと思われます。口座名義人からの取引履歴などの開示請求であれば,金融機関が預金に関する各種事務手続きの委任を預金者(口座名義人であることが多い)から受けているので,法律上報告義務がありますので,開示に応じないといけないのが原則です。

 これに対して,いくら配偶者といっても預金者そのものではありません。まして,離婚で財産分与の資料の開示が問題になるケースでは,預金者である配偶者が開示に反対することが十分考えられます。この場合に開示してしまうと,銀行取引で秘密にしておくべき事項を勝手に開示した(いわゆる守秘義務違反)になりかねません。実際,裁判例の中には,銀行取引に関する事情は守秘義務の対象になると判断しているものがありますので,こうした義務の違反によるリスクを恐れる金融機関は開示に応じないことが多いのではないかと思われます。

 

 ですから,財産分与の資料の内容が争いになっている・開示してほしいけど相手が協力してくれないケースでは,自分が動くだけでは財産の開示を求められない可能性は十分にあります。もちろん,どんな財産があるのか見当がつかないケースでは,問題がもっと大きくなりますが,ある程度分かっていても相手の協力を得られない場合には問題が大きくなります。こうした傾向は裁判所の手続きなどを使っても残る面はありますが,その程度は大きいのではないかと思われます。

 

 このように,財産分与の資料集めには色々と問題があります。次回に続きます。

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