以前,こんな場合でも婚姻費用を払わないといけないのかということで触れた点の補足を今回はしたいと思います。以前触れたのは,いわゆる不倫・不貞をした側からの婚姻費用の請求(生活費を負担してほしいという請求)でした。この点に関して,裁判例を紹介します。
問題になったケースは,子どもも成人している比較的高齢の夫婦のケースです。妻が夫に対して離婚裁判を起こすとともに,自らが無職になった後の生活費(婚姻費用)を払って欲しいとそれぞれ調停を起こしたようです。話合いは物別れに終わったために,離婚裁判と婚姻費用の審判という裁判官の判断に移りました。
婚姻費用の審判では,①不貞・不倫が存在したかどうか②仮に不倫・不貞があった場合に,不倫や不貞をした側から相手方配偶者に婚姻費用の支払いが認められるか③仮に婚姻費用の支払いが認められたら,どのように婚姻費用の金額を計算するのか,が争点になりました。
この点について,裁判所は,①について不倫・不貞の事実を認めています。そのうえで,②については,不倫・不貞によって別居にいたり,夫婦関係は破たんした事・こうした破綻を理由に離婚裁判で離婚を求めている側から,婚姻費用の支払い求めることは信義に反するとして,婚姻費用の支払いは認められないと判断しています。②については,婚姻関係に伴う義務として婚姻費用の負担が課せられているのに,自ら婚姻関係が壊れることで婚姻関係に伴う義務が消滅したことを認めながら請求するのはおかしいとの記載が判断の中でなされています。
これは高裁での判断で,第1審では不倫・不貞の事実がないと判断していることから,婚姻費用の支払いを命じています。
ただし,この裁判例では未成年の子供がいないという点には注意が必要です。つまり,子どもの監護の費用の負担が生じないケースです。これに対して,別の裁判例では未成年の子供がいるものでは,子どもの監護の費用は婚姻費用に含まれているのであって,この部分は不倫・不貞をした側からの婚姻費用の請求であっても,認められるべきと判断しています。
ちなみに,こちらの裁判例では,未成年の子供を今養育監護している親(母親)が父親の下から無断で連れ去ったケースなのですが,そうした場合でも子どもの養育監護費用の負担はしないといけないと判断しています。
次回に続きます。
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