法律のいろは

遺言の無効が問題になるケースとは?(その②)

2013年4月21日 更新 

 遺言が無効になる,それでは遺言を作った意味がなくなるのは間違いありませんね。

 先日はニュース報道をもとに無効になる場合として,遺言能力というものが問題になる場合を取り上げました。今回は遺言能力が問題にならないように注意しておいた方がいいことを触れていきます。

 15歳に満たない場合には当然に遺言能力は否定されます。ですから,問題になるのは判断する能力(意思能力と呼ばれるもの)があるかどうかです。主に問題になるのは,遺言した際に相当高齢化が進むだけでなく認知症などでちゃんと判断できたのかが問題となるケースです。

 特に,財産の多くを特定の方に挙げる内容の場合には注意が必要です。大よそ問題が起きるのはその内容に不満がある人がいるケースですから。ちなみに,前に遺言書を書いたことがあって,その内容とだいぶ変わる場合にも注意が必要です。遺言は後で書いた方が優先しますので,遺言が変わることでもらえなくなる人とのトラブルの可能性が出てくるからです。

 まずは,医者にかかっている方の場合には,主治医に状況をしっかりと確認する必要があります。大丈夫だと思っていたところ,実は認知症の症状が結構進んでいたとか意識混濁が結構見られたというのでは,判断できたのか問題が残ります。診断書も取っておいた方が問題は少ないでしょう。

 主治医がいない方もいますけど,多くの高齢者の方は通院はあるでしょうから,重要なポイントだと思われます。要介護度がどうであるのか・日常生活の際に短期的な記憶が全く残っていない・幻聴や昼夜逆転の話があるのか等介護支援で関わっている方や家族に,認知症その他が疑われる様子がないのかの確認をしておくことも重要です。過信はできませんが,改訂長谷川式簡易知能スケール(HDS-R)の点数も確認しておいた方がいいでしょう(場合によっては受けてもらう)。このテストの点数だけが独り歩きすることは避けておいた方がいいですが(20点を下回れば認知症の疑いが生じ,10点を下回ると重度の認知症が疑われるとされています。ただし,遺言の有効性が争われたケースでは必ずしも10点に近い点数だから無効とはなっていないものもあります),どうするかを考える上では参考にはなります。

 次に,遺言を作成する際の状況を録画しておくことも一つの手です。特に,自分の手で書く自筆証書遺言という方法では,言われるがままに内容も分からず書かれたのではないかということで争いが生じることがあります。しっかりと内容が分かったうえで遺言を書いた状況があれば,争いを防ぐことができますね。

 ちなみに,公証人という方が作る公正証書遺言の場合は,内容を公証人が遺言をする本人に読み聞かせます(理屈上は,「口授」といって,作成をする本人が公証人に内容を伝えて遺言書を作成してもらうことになります。ただし,事前に打ち合わせをしておき,内容面の構成や校正などをきちんとしたうえで,できたものを確認するケースも多いように思われます)。ですから,内容を理解しているかの点については第3者のチェックがある程度およびます。とはいっても,公証人の方も医者ではないため,ご本人がしっかりと判断できるかまで完全に把握できるとまでは言えない可能性は残りますし,打ち合わせ段階から本人の関与が小さく,読み聞かせによる確認の際も反応がほぼないケースでは,判断能力とともに「口授」の有無も問題になることがあります。

とはいえ,公証人の方が関与している場合には,有効性が問題になる場合は少なくなる傾向にあるように思われます。

 

 ですから,主治医の方に遺言をする方の健康状態などを確認しておくのは重要です。可能であれば,意味を理解していることを録画しておけば,よりよいでしょう。

 親族同士で長い紛争にならないようにするためにも,ちゃんと準備しておくことが重要な気はします。

 

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。