法律のいろは

給料・賃金をめぐる法律問題(その④)

2014年3月29日 更新 

 前回(本当にだいぶ前になりますが…)は賃金は誰が、どのように決めるのかについてお話ししました。

 賃金の問題で意外に出てくるのが、労働者が故意・あるいは過失で会社に損害を与え(あとえば使い込みなど)、会社のもつ債権(損害賠償請求権)と、労働の対価としての賃金とを相殺したいが可能か、ということです。

 実際には、このような形で処理をしている会社は結構あるのでなないでしょうか。

 しかし、答えは原則ノーです。法律では、賃金は全額を支払わなければならず、使用者である会社が一方的に賃金を控除してはならないという定めがありますが、これは先に述べたような、会社が労働者に対して持っている債権を労働者の賃金債権と相殺することも禁止していると考えられるからです。

 判例でも、労働者の生活の基盤になる賃金を労働者が確実に受け取れるようにするのが、賃料を全額払いにすべきという定めの目的であるから、相殺も禁止していると判断しています。

 ただ、一方では判例上、使用者が労働者の承諾(同意)を得て相殺する場合は、その承諾(同意)が労働者の自由な意思に基づいて行われたといえる合理的な理由があれば全額払いの原則に反せず、相殺もOKとしています。

 実際のところ、どういった場合が「労働者の自由な意思に基づいて行われたといえる合理的な理由」があるといえるか、判断が微妙なケースが出てくると思います。そういったときには、のちのち相殺の効力が有効か争われてしまいかねません。

 できれば、過半数組合か過半数従業員代表の集団的な合意を得て行うのが無難でしょう。

 ちなみに、しばしばみられる会社からの前借金と賃金の相殺は、上記とは別に法律上禁止されていますので、併せて注意が必要でしょう。

 

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