法律のいろは

遺産と葬儀費用

2014年5月4日 更新 

 相続の問題が生じた場合、しばしばあるのは、亡くなった方の葬儀費用を誰が負担するか、というものです。最近では葬儀費用も価格が下がりつつあるものの、それでもまとまったお金が必要になることが多いと思います。そのため、上記のことが問題になってきます。

 葬儀費用の負担者は誰になるのか、ということについては別項目で触れています(「相続の際に,このお金はどうなるのですか?(その①)」)。これにはいくつか説があり、葬儀を行った特定の相続人、つまり喪主の負担と考える審判例はありますが裁判例も分かれているようです。具体的には他に,相続人全員で共同で負担をするという考え方や相続財産の負担とする考え方・慣習などで決まるとする(ケースバイケースである)とする考え方などです。最終的にどうするかは相続人同士の話し合いで解決をする(遺言がない場合)か・合意できなければ裁判手続きなどでの解決に至ることになるでしょう。

 では、葬儀を行うにあたり、手持ち現金がないため、亡くなった人名義の預金口座から充てようとしたとき、銀行が引き出しに応じてくれるでしょうか?

 先に述べたとおり、葬儀費用の負担は誰が行うべきか、ということについて、説が分かれていることから、銀行としても仮に相続人の一人からの払い戻し請求に応じた場合、後でその払戻が無効となりうるリスクがあることから、なかなか応じられないのではないかと思います。とくに、法定相続分を上回る金額の払い戻しをしたときには、他の相続人が、上回る金額について無効主張をしてきたとき、場合によっては、銀行が二重に支払わなければならなくなる可能性もあります。できれば、相続人全員の同意を得て、払戻を求めるのがベストですが、相続人がそもそも何人いるか調査が必要であったり、葬儀費用を至急調達する必要があり、他の相続人の同意を取り付けることが困難なことも少なくないでしょう。

 裁判例の変更もあって,預金については遺産分割が必要とはされていますが,法律の改正によって預金の一部払い戻しができるようになりました。この制度は他のコラムで詳しく触れますが,家庭裁判所の関与なく,法令で定められた上限の範囲内(法定相続分×1/でかつ各金融機関で150万円以内)で・各相続人が亡くなった方の預金の払い戻しができるとするものです。使途は問題にはなりませんが,払い戻しを慕う分は遺産分割で取得したものとされ,残りの遺産分割協議を行う際にも当然考慮されることになります。

 このほかに家庭裁判所の関与がある中での「仮分割」(審判前の保全処分)という制度もありますが,裁判官の裁量で決まる(金額や可否等)ことや遺産分割調停や審判の申し立ても必要となります

 死後の葬儀費用の問題が生じないよう(先ほどの見解が分かれている点もあるため)、あらかじめ遺言書で葬儀費用を亡くなった人名義の預金から出すといった条項を設けておき、トラブルが生じないようにすることも必要でしょう。

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