法律のいろは

婚姻費用(生活費)の支払いはいつからとされるのでしょうか?

2014年11月3日 更新 

 以前、婚姻費用に関するコラムの中で、婚姻費用の支払いをいつからしなければならないか(始期)・いつまでしなければならないか(終期)について触れました。

 その際には、婚姻費用の支払い義務を負うもの(義務者)が支払いをしてくれないときは、支払いを受ける側(権利者)が支払いを求めたとき(通常は婚姻費用分担調停または審判申し立てのとき)に支払い義務ある者が支払わなければならなくなることが多いとお話しました。

 しかし、実際のところ、婚姻費用は婚姻生活を営むにあたって必要な費用ですから、たとえ請求をしなくても日々発生するものといえます。

 別居をしているとはいえ、離婚していない限りお互い協力し、助け合う義務があることから、他方が生活費の支払いがないとやっていけない状況かどうかというのは比較的わかるといえます。とくに別居してさほど経っていない時期であればなおさらです。

 このことから、婚姻費用の支払い義務の始まりを調停申し立てより前(別居後まもなくの月から)とした審判例があります。

 事案は、権利者の収入が別居時点で月額10万円もなく、他方義務者の収入は年630万円あり、権利者が別居から1か月余りで調停の申し立てをしているというものでした。

 審判例は、

 ①別居時の権利者の収入から、生活を成り立つには十分でないことが義務者も認識できた

 ②別居後ほどなくして調停申し立てがなされていること、から未払いの婚姻費用が多額になり義務者  

 に酷になる場合にあたらず、また申し立ての期間が別居からさほど経っていないこと

 から、申し立てまでの間支払いがなくとも生活ができたという事情にもあたらないことを理由に、上記のとおり別居後すぐ次の月から婚姻費用を支払うようにとの内容になっています。

 この審判例からすれば、やはりいずれにせよ権利者は義務者と婚姻費用の話し合いがつかなさそうであれば、別居後できるだけ早く調停・審判の申し立てをした方がよく、時がたてばたつほど申し立て後からの支払いしか認められなくなるといえるでしょう。

 逆に婚姻費用自体としての支払いでなくても、たとえば買い物の際のクレジットカードや公共料金の支払いを義務者がしていて、その額が婚姻費用算定表で導かれる金額よりも高額な場合は、その分も考慮して、調停申し立て後数か月のちからの支払いしか認められないケースもあるようです。

 

 

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