法律のいろは

保険金と離婚の際の財産分与(その①)

2015年1月8日 更新 

 生命保険を結婚後に夫婦どちらかが契約し,契約を続けている場合に,結婚期間(通常は別居するまで)に相当する解約返戻金(解約したら戻ってくるだろうお金)が離婚の際の財産分与の対象になるという話は以前触れました。これに対し,将来の満期保険金は財産分与の対象にはなりません。古い裁判例があるところですが,これは将来の不確定な要素があるためというのが理由です。当然,そうした要素のない満期保険金ですでに支払われた場合は,財産分与の対象になります。

 これに対し,夫婦のどちらかが離婚までに交通事故に遭って損害賠償の支払いを受けた・自らが掛けていた保険金の支払いを受けた場合はどうなるのでしょうか?受けた損害を埋めてもらうものなのだから,新たに財産を作ったわけではないと考えれば,財産分与の対象にはならないと考えることができます。この点については裁判例があります。

 問題となったケースでは,離婚前に良人が交通事故に遭い受け取った損害賠償金(厳密には加害者加入会社から保険金支払いとして受け取ったもの)が財産分与の対象になるかどうかが争われたものです。結論から言えば,損害賠償のうち,何に対する賠償にあたるかどうかで財産分与の対象になる部分とならない部分を分けています。
 
 交通事故によって被る損害はいわゆる人損(死傷)については,慰謝料部分や収入減少部分(休業損害や逸失利益と呼ばれるもの)等いくつかの項目に分かれることになります。このうち,慰謝料は,大ざっぱに言えば,事故で傷を負ったことについての苦痛や後遺症が残ったことへの苦痛に対する者です。これに対し,収入減少部分は現実に減少したもの(もうこれ以上の回復が大きくは見込めないと考えられる時点まで)と後遺症が残ったことで今後収入の減少が見込まれる部分に大ざっぱに言えば分けることができます(いずれも死亡は前提としていません)。

 前記の裁判例では,こうした慰藉料部分については財産分与の対象にはならないとし,収入減少部分は財産分与の対象になると判断しています。

 この理由は先ほどの性質の違いが影響するのですが,この裁判例での金額の算定の仕方を含めて次回に続きます。

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