法律のいろは

養子縁組が無効になる場合とは(その④,無効になることの影響)?

2016年4月4日 更新 

 高齢の方が親族あるいはその他の方を養子とする養子縁組をした場合に,どのような場合に無効となりうるのかを前回触れました。今回は,こうした養子縁組が無効になることの影響がどのようなものであるのかについて,触れてみたいと思います。

 まず,こうした養子縁組をする目的として,相続の順位や取り分を動かすというものも考えられますし,税金の対策をしたいというものも考えられます。その他についてはここでは触れませんし,税金についても限界があるところですが,この話もここでは触れません。

 養子縁組をすることで,本来は相続人ではなかった孫(代襲相続ではないことが前提です)や子供の配偶者を相続人にした場合に,当然この方たちは遺産分割協議をする当事者になります。遺産分割協議では,全ての当事者が話し合いに加わっている必要がありますし,話の前提としてそれぞれの相続分をもとに,どういった財産を・誰が・どのように,取得するのかを話し合って決めることになります。

 そのため,孫や子供の配偶者,更には全くの第3者について,養子縁組が無効になることによって,当事者でもないしそれぞれの相続分も大きく異なってくる場合には,遺産分割協議の効力に影響を与える場合も十分出てきうるところです。効力に影響を与えてしまうという事になれば,当然遺産分割協議のやり直しという事につながってきかねません。他のコラムでも触れていますが,どこまでやり直すのかという点は原則その方の取得した部分のみという見解とすべてやり直すのが原則であるとする見解があります。最初の見解によっても,全体で公平に反するだけの影響があればやり直しになるとのことなので,遺産分割協議の内容によって変わってきます。

 このような事態になってしまうと,いつまでも問題が解決しない・問題の激化ということも可能性としては十分に出てきます。こうしたことを避けるには,遺産分割協議をする前に,前提事項として,問題になりそうな遺産分割協議があるかどうかを注意した方がいいでしょう。

 このほかに前提の問題として,遺産の範囲がどこまでであるとか・遺言の効力(遺言を踏まえても遺産分割協議が行われる場合)等がありますので,こうした点にも注意が必要です。紛争になりそうな場合には,遺産分割協議を呼びかけた際に,争おうとする側から異論を出されることが多いですので,前提を飛ばして遺産分割協議がなされるという事はそこまでは多くはないでしょう。

 ただし,問題は避けれるには避けた方がいいですので,養子縁組をする際などに養親となる高齢者の方の健康状態や意向等についてのしっかりとした確認が重要となります。裁判例で問題になったケースでは,個別の事実関係を証拠に基づき認定しそれに沿って検討を加えているところですので,考慮要素とされている点は重要となります。一度面前で養子にしたいと述べたから直ちに縁組意思あり・判断能力ありとは単純に言えない点があります。

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