法律のいろは

相続と口座からのお金の引き出し(その④)

2015年4月14日 更新 

 前回は,頻回にお金の引き出しがなくなられた方の生前になされていた場合について触れていきました。身の回りをしていた親族(法律上相続人と考えられる方,子供など)がお金を引き出していたことを前提とします。前回は,この場合に亡くなられた方の同意があったかどうかが大きなポイントになるという話をしました。今回は,同意があったとして問題になる点を前回より詳しく触れていきます。

 前回,同意があった場合には贈与があったと考えられること・遺産分割において特別受益と考えられる可能性があること・金額によっては遺留分減殺請求の問題が出てくるという話を触れました。今回は,この話について少し詳しく触れます。

まず,特別受益について触れていきます。前回も触れましたように,生計の資の贈与といえる場合には,特別受益にあたり,通常こうした場合にはあたることが多いと考えられます。この場合にどうなるのかという事ですが,遺産分割協議の中で,法律上もらった分を調整することで相続人の間の不公平感を調整するというのが特別受益による調整の制度になります。ただし,遺言によってこうした調整を行わないようにすることはできます。この持ち戻し免除の制度も民法改正で一部変更されている部分もありますが,別のコラムで触れます。

 この特別受益といえる場合には,贈与があって反面理由のない預金の使い込みがないことになります。贈与があるということは基礎控除110万円分を超えての金額であれば(贈与税について暦年課税制度を選対くしていることを前提とします),贈与税に関する非課税制度(主に特例として法令で定められています)の適用がない限りは実際に贈与があれば,贈与税の申告がなされているはずだろうというところから,この有無(親族間で贈与契約書がないこともあり,特に使い込みかどうかが問題になるケースではないことも十分ありえます)も,贈与の有無を考える上でのポイントの一つです。

 少し話が飛びますが,いわゆる相続税に関する税務調査が行われる場合には,特に贈与税の除斥期間(申告書提出時期から6年が原則)を超えての贈与については,名義預金(実際には贈与がなく名前を借りただけで,亡くなった方の遺産である)かどうかが厳しく確認されることになります。ここでも贈与契約書や贈与税の申告の有無などが問題になります。この話はほかの名義預金の話とともに別のコラムで触れます。

 贈与ありとして遺産分割協議での特別受益の問題として対応するか(この場合には相続人の間で調整が必要ですが,相手が応じない場合には難しくなります)・贈与なしとして賠償などの請求をするのかを考えることになります。あまりに預金からの引き出しが多いなどの事情が税務当局によってほかの事情もあって把握されていると前記の点も含めて問題が出ることもありえます。

 

 たとえば,生前に合計500万円の引き出しが行われ,この部分が引き出した一人の方への贈与と考えられる場合でかつ亡くなられた方が死亡した時点で相続財産が1500万円ある場合を考えてみます。子供のみ相続人は4人いることを前提とします。この場合贈与がなければ2000万円のお金が存在したはずです。こうした点を考慮しないのは不公平(本来であれば各自500万円ずつの分配になるはずが,調整をしないと,一人だけ875万円で残りの方が375万円になってしまいます)なので,調整を特別受益の制度により行うことになります。
 ここでは調整により,引き出したお金を戻して計算して調整を行うことになります。となると,1500万円+500万円=2000万円,各自500万円のお金を受け取れるはずです。ただし,既に引き出した方が500万円を受け取っており,本来ないはずのお金は分配できないので,このお金を遺産分割では差し引くことになります。そうすると,引き出した方は遺産分割では全くもらえず,他の方が500万円をこのケースではもらうことになります。

 このほか,遺留分を侵害するほどの程度に至っていた場合には,遺留分減殺請求の話が出てくる可能性もありますが,次回以降に触れたいと思います。

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