法律のいろは

相続と口座からのお金の引き出し(その⑤)

2015年4月18日 更新 

 亡くなった方の生前にお金を引き出した場合にどのようなことが考えられるのかという点について何回か触れてきました。前回は,まとまってお金を引き出していたケースについて,亡くなった方が引き出した方(身の回りの世話をしていた第3者であるという事が前提です)の引き出しについて同意を与えていたという場合について触れました。特別受益という形で,遺産分割の際に調整の可能性が出てくるという話について触れました。

 

 前回の最後に,亡くなられた方の生前に何度かあるいは一度の引き出しで口座の中のお金の大半が引き出された場合でかつ亡くなられた方がそのことに同意を与えていた場合には,遺留分の問題が出てくる可能性があるという話を少し触れました。もっとも,そこまで大半のお金を贈与するというのに,遺言等が存在しないという事であれば,そもそも贈与の意思があったのかが問題になるのが通常と思われます。そこで,遺留分減殺請求・遺留分侵害請求の話は次回以降で触れるとして,贈与があったと言えるかどうかの話について触れます。

 贈与の書類上の証拠となるものは,通常贈与契約書(贈与の意思が読み取れるもの)あるいは先ほども触れた遺言が真っ先に考えられるものです。もっとも,口座からの引き出しが行われるケースにはそれなりにそうした証拠はないことが考えられます。そうした場合には,これまでの身の回りの世話をしていた方と亡くなられた方との関係や経緯,その他贈与をする動機があるか等が大きな問題となってきます。この中には,身の回りの世話をする方が面倒を見るに至った経緯やそれまでの親族などの関係,他の相続人となりうる方との関係など様々な事情が関わってきます。争いが生じた場合には,争いのある方の中でこうした点の整理等が相当な問題が出てくるところです。こういった問題を避けるために,遺言や贈与契約書をあらかじめ作っておくのが一つの方法ですが,その場合でも作成の過程や偽造したかどうかの問題は残るところです。公正証書でこうした書類を作れば,偽造に関しては争いが避けられる点が大きくなるところではあります。

 また,贈与税で原則である暦年課税制度がとられている場合には,金額によっては基礎控除を超え非課税対象にならないこともありえます。そのため,その申告などをしているのかどうかも証拠資料となりえます。

 

 このほか,何かしらの使途があるから贈与をした(例えば,孫の教育資金その他のため)という説明がある場合もありえます。こうした説明に整合する話が存在するのか・裏付けがあるのかといった点も実際に説明があったといえるのかどうかという点と関わります。

 

 説明がなされた・根拠があるのかどうかは,使い込みであるとして損害賠償請求・不当利得返還請求によってお金の支払いを求める場合の金額(説明や根拠のない金額が請求できる金額)となるため,重要となっていきます。

 その他の問題については次回に触れたいと思います。

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