法律のいろは

親族による高齢者名義の預金口座からの払い戻しの可否

2015年4月19日 更新 

 近年、高齢化が急速に進み、成年後見人や保佐人、補助人の選任されるケースが増加している印象があります。

 そこで今回は、高齢者をめぐる法律問題になりがちなケースの一つとして、病気や身体的に不自由になったため、外出が難しい高齢者に代わり、親族が高齢者名義の預金口座の払い戻しを求められるかどうかを考えてみたいと思います。

 代わりに銀行へ赴いた親族が、その高齢者による委任状など、高齢者が自分の意思でその親族を代理人に選んだことが分かるような書類をもってきていれば、一応はその親族が代理権をもっているように思われます。

 ただ、のちにその高齢者の判断能力に争いが出てくる可能性も否定できず、場合によりその親族への預金払い戻しが銀行の善意・無過失によるものといえないとして無効と主張される危険もあります。

 ですから、銀行側としても、単に委任状などがあればいいという訳にはいかないため、その親族に高齢者との親族関係が分かる資料の提示を求めたり、高齢者が銀行に自ら来ることができない理由の確認が少なくとも必要になります。

 さらにその親族の説明が曖昧であったり、払い戻し額が高額である場合などには、高齢者自身に事情を聞くなどして慎重な対応をする可能性もあるでしょう。
 

 高齢者への電話、あるいは面談での事情聴取の結果、高齢者自身の判断能力に疑問がある場合は、親族からの払い戻しが拒まれ、成年後見などの申立を勧められることもありえます。

 払い戻しの理由がたとえば、高齢者の治療に必要という場合でも同様で、高齢者自身の状況によっては、判断能力に疑問があることも考えられるので、銀行から高齢者自身や、高齢者のいる病院の主治医から事情聴取をした上での払い戻しになることも考えられます。

 場合によっては、銀行から病院に高齢者の病状やかかる治療費を確認の上、銀行から病院へ直接支払いを行うということもありえます。その場合でも、もし何か預金払い戻しに関する事故があったときは、銀行に発生する損害を負担するといった内容の念書を書くよう要求されることもあるでしょう。

 高齢になればなるほど、判断能力の低下への疑問が向けられる可能性が出てくるため、成年後見等の申立など、早めの対応を考えておく必要があります。

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