法律のいろは

相続人の1人による預金の払い戻しの可否

2015年4月25日 更新 

 被相続人が亡くなり、銀行に預金口座をもっている場合、相続人の1人が銀行に行って、自分は相続人なので、法定相続分に応じて払い戻してほしいといったとき、認められるでしょうか。

 遺産の中に金銭など、性質上分割ができるものについては、法律上当然分割され、相続人が複数いればその相続分に応じて権利を取得するとするのが裁判所の判断です。

 そうなると、相続人は法定相続人の範囲であれば、銀行から単独で被相続人名義の預金口座からの払い戻しを受けることができそうです。しかし,最高裁判所はそれぞれの預金の性質を考慮してということですが,普通預金であれ定期預金であれその性質上法律上当然に分割されるわけではなく,遺産分割でどのように分けるのかを決めるべきであると判断をしています。そのため,その後の法律改正で認められた法令の範囲内で各相続人が行うことができる預金の一部払い戻しを行う以外には自由に払い戻すことはできなくなりました。これとは別の話として,各相続人は一人であっても各金融機関に被相続人の口座に関する取引の履歴を取り寄せを求めることは可能です。亡くなった時点での残高だけでなく,特になるなる直前の時期などのお金の入出金の状況がここからわかることになります。

ここでの預金の一部払い戻しの制度とは,預金額の1/3×法定相続分の範囲内の預金について,各金融機関ごとに法令で定められた上限額である150万円の範囲内で各相続人が払い戻しをできるとする制度です。ここでの預金額とは,相続開始時に存在した預金額なので,よく使い込みなのかが問題になる亡くなる直前の時期に引き出された預金の額は考慮されません。また,ここで払い戻したお金は遺産分割で既に取得されたものとして扱い,残りの遺産の分割についての話を進めていくことになります。

 この制度以外にも,遺産分割調停や審判といった家庭裁判所での遺産分割の話し合いの手続きを申し立てることとセットで,審判前の保全処分という内容で,預金の一部払い戻しを家庭裁判所に許可を求めることも可能です。ここでは払い戻しを認めるかは家庭裁判所の判断ということになりますが,法令の改正により認める要件が緩和されたとされています。ここで要件としては,裁判官が「必要がある」と認めることで,各裁判ごとの裁量がはたらく形にはなりますが,遺産に関する負債の支払いや相続人の生活費を賄うために必要がある場合が想定されているようです。ただし,他の相続人の利益を侵害することはできないという制限があります。ここでの払い戻し(仮の分割)がなされたことは最終的な遺産分割の解決では考慮されないこととされており(これはすでに一部遺産分割が終了したとは扱わないこと),払い戻しされたお金を含めて最終的な解決を考えていくものとされています。

  
 各金融機関は最終的な払戻し・清算はいわゆる凍結された口座については,戸籍謄本等の資料による相続関係の確認や遺言書や遺産分割協議書(調停調書・審判書)などで確認できない限りはしないでしょうけれども,家庭裁判所の判断を経ない一部払い戻しについては戸籍謄本等の資料による法定相続分の確認ができれば上限の範囲内では応じることになるでしょう。

 相続人の一人が預金口座を払い戻すということは,その場面によっては使い込みで後で紛争が生じる可能性もあり,裁判例の判断の変更(以前は預金口座も当然分割とされていました。ただし,払い戻しの際には戸籍関係の資料や他の相続人の印鑑証明書などが要求されていました。ここから遺産分割が必要と判断が変更されています)とともに法律改正がなされており,どの範囲で問題なく払い戻しができるのか・後の遺産分割協議などへの影響がどうなのかを考えておく必要があります。家庭裁判所の許可を経ない一部払い戻しは遺産分割において取得したことになるので,相続税の課税の場面にも当然に影響はしてきますが,そのお金が必要なのかどうかも含めて度数るかを関g萎えていくことになるでしょう。  

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