法律のいろは

相続人の1人が被相続人から身元保証債務等の負債を支払ってもらったときの遺産分割での扱い

2015年5月1日 更新 

 

 相続の問題を考える上で、なかなかややこしいのが、相続人の中に、なくなった人(被相続人)からたとえば結婚の際の資金や家を建てるときの頭金を出してもらっていたりする場合(この、結婚資金や頭金を「特別な受益」とみるか)、あるいは被相続人がなくなるまえに同居して、病気の被相続人の身の周りの世話などをしていたとき、被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をしたといえるか、という点です。

 とくに、後者(寄与分)については、寄与の度合いを具体的にどう評価するかが難しく、相続問題をややこしくする一つであります。実際には特別な寄与のハードルは相当に高いものとなっています。今回は前者である特別受益について考えます。

 特別受益というと、さきにあげたような生前贈与・あるいは遺贈が一般だと思われます。特別受益は生計の資本に関する贈与・結婚や養子縁組の際の贈与とされているためです。被相続人が相続人の身元保証人になっていて、相続人がヘマをして会社に損害を与えたとき、被相続人がその債務を支払い、なおかつ相続人に求償しなければ、当該相続人は本来自分が負担すべきであった債務を支払わずにすむという利益を受けることになります。その部分の支払いを免れることで,その部分のお金を生活費のために使うことができるという面もあります。

 支払いを免れたということは,「贈与」ということは言葉から何かしらのお金その他モノをあたえられたとはいいにくいところもありますが、結果的にそれによって当該相続人は負担から免れている以上、他の相続にとの間で公平を図る必要があります。

 そこで、このような場合であっても、当該相続人は「特別受益」を得たとして、相続財産にその負担を免れた金額を相続財産に持ち戻して考えるべきでしょう。

 なお、裁判例では、相続人ではなく、その配偶者が被相続人から身元保証債務を支払ってもらったケースでも、特別受益とみて、相続の際に考慮したものがあります。配偶者などに関しては特に贈与を受けても相続人に対するものではないため考慮されないのが原則ですが,相続人がそのことによって利益を受けているケースでは,その範囲で贈与を受けたものとして扱われます。ここでの話も,本来支払うべきお金を支払ってもらうことで同じように相続人が利益を受けていることを前提にしているものと考えられます。

 どこまで利益を受けていたといえるのか等ケースによって,どこまでが贈与と同じ扱いになるのかは変わってきます。代わりに支払いをしてもらうこと・それが配偶者や相続人の子供に対するものであっても,同じ財布ということが言えれば(子供が独立していて,そこへの贈与から相続人が利益を受けていないという場合もありうるでしょう,その範囲で贈与と同じ扱いができることもありうるでしょう。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。