法律のいろは

亡くなった方に大きな借金があることが分かったら(その⑥)

2015年9月21日 更新 

 亡くなった方の相続人の立場にはあるけれども,死後暫くしてからその方に大きな負債があることが分かった場合の話について,これまで何度か触れてきました。相続放棄という制度による対応があるものの,期間が制限されていること・そのスタート時点の話に関して,前回までに触れてきたところです。

 そこでは,「自分について相続が始まった」ことを知ってから3か月以内というのが制限になっていました。その方が亡くなったこと・自分が相続人の立場であることを知っていれば,こうしたスタート時点を満たすことになります。それでも,大きな負債も財産もないから放っておいた場合に,後で判明した大きな借金を逃れるすべはないのでしょうか?

 最高裁判所の判断にでは,生前に大きな負債について知らされていなかったし,生前音信不通などの事情があって大きな負債の存在を知ることが難しいと考えられるケースで次の様に判断しています。先ほどの法律の定めがある場合のほか,例外的に,
 ア 亡くなった方に相続財産がないと信じたため相続放棄などをしなかった場合
 イ 亡くなった方との生前の付き合い状況等から,どういった財産・負債があるのかを調べるのが難しいと考えられる
 ウ 相続人の立場にある方に相続財産がないと考えるだけの正当な事情が認められる
 ような場合に,3か月のスタートは,相続財産の一部でも知った・一般的に知ることができたはずと考えられるとき,であると判断しています。

 こうした判断から,相続放棄を使える場面は少しは増えるところですが,こういった事情がどのような場合に満たされるかはケースごとの判断になります。

 また,高等裁判所レベルの判断ですが,仮に相続財産の一部があることを相続放棄をしたいと考える方が知っていたとしても,相続放棄の期間制限はスタートしない場合があると判断したものがあります。そこでは,そうした事情があっても,
 (1)自分に遺産からの取り分はなく
 (2)一般的にその存在を知っていれば相続放棄により負債から逃れるだろう負債の存在を放棄したいと考える方が知らない
 (3)(2)で知らないことについて正当な理由がある
 場合には,そうした負債の存在を放棄したい方が知った・普通知ることができたと考えられる時期から期間制限がスタートすると述べています。

 このように,スタートの時期について例外を認める解釈も出ているところです。ただし同じく高等裁判所レベルの判断の中には,相続財産があることは知っていたが負債の存在までは知らなかったという方について,先ほどの裁判例の基準には当てはまらないとしたものもあります。  そのためいざという場合には,相続放棄に必要な期間が経過しているとの判断に至るリスクも意識しつつ,ほぼ取り分がないあるいは財産価値がないために,負債が多くあれば相続放棄をしていただろうケースについて負債を認識しただろう時点までスタートを遅らせた裁判例に依拠して相続放棄が可能であるとの主張をしていくことになるでしょう。

メールフォームもしくはお電話で、お問い合わせ・相談日時の予約をお願いします

早くから弁護士のサポートを得ることで、解決できることがたくさんあります。後悔しないためにも、1人で悩まず、お気軽にご相談下さい。誠実に対応させていただきます。