法律のいろは

過去の婚姻費用の取り扱い(財産分与との関係・補足)

2015年11月23日 更新 

 夫婦が離婚をする際に,以前支払ってもらっていなかった婚姻費用(生活費)を請求できるのか・支払い過ぎたものを清算してもらえるのかという話が問題になることがあります。基本的な事柄は以前触れましたとおり,清算の対象とはなりうるという話でした。ただし,裁判例の中には支払い過ぎの婚姻費用の清算を認めない場合がありうるという事柄を述べるものがあります。

 そのケースでは,夫婦の関係が円満なうちに支払い過ぎた生活費〈婚姻費用)を清算できるかも争点の一つとなったものです。裁判所の判断では,夫婦関係が円満なうちに,いわゆる算定表等に比べて過度に負担した生活費〈婚姻費用)は通常贈与をする意味合いでなされるので,原則として清算の対象とはならないと判断しています。

 こうした争点では,清算の対象となるかどうか・清算の範囲が問題となりますが,このケースでは例外にあたる事情がないと判断されています。

 多くのケースでは,別居後に多くの金銭の支払いを求められて生活が立ちいかなくなったので,いわゆる算定表等の基準で支払うようになったが,離婚に際して払い過ぎの清算を求めるものになるのではないかと思われます。こうしたケースでは,先ほどの裁判例(高等裁判所の判断事項になります)とは考慮している場合が異なりますので,同様には考えられません。

 ただし,以前に相当多額を支払っていてその清算を求めたいと考えるのであれば,こうした争点が出てきます。裁判例の判断では,通常清算の対象とはならないとのことですので,離婚の際には清算を必要とするという約束が夫婦で何かしら示されている必要があります。しかし,通常そうした事柄は少ないのではないでしょうか?もちろん,結婚前に予め合意をしておく(可能なら,書類の様に記録に残せるほうがいいでしょう)方法はありえます。

 このように,裁判例の中には,過去の払い過ぎの婚姻費用の清算を制限する(場面に寄っての制限)旨を述べるものがあります。

 これに対して,過少な支払しか受けていない場合には,通常離婚の際にその清算を求めることが多いでしょう。ただし,場合によっては,その部分を清算することなく離婚をする場合もありえます。離婚後にこうしたものの清算を求めることができるかは一つの問題となります。次回に触れます。

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