法律のいろは

遺言が撤回されたものとして扱われる場合とは?

2015年12月29日 更新 

 先日自分で書いた遺言が撤回された場合と考えられるケースについて,最高裁判所の判断が出ていました。遺言の撤回に関しては法律の定めや裁判例がいくつか出ているところですので,どういった場合に撤回と考えられるのか等について,触れていきたいと思います。

 まず,遺言の撤回について,法律上は次のとおり定められています。相続が開始する前までであれば,遺言をした方はいつでも撤回できるという内容になります。明確に撤回するという場合もあれば,前とは異なる内容の遺言をするという事も考えられます。遺言をした内容が矛盾する場合には,撤回をしたものと扱われます。撤回に関しては法律上の規定に定められたとおりに行う必要があります。

 ちなみに,撤回をしないように遺言をした方に一筆とっておいたとしても,こうした約束は法律上は意味を持ちません。つまり,自由に撤回をできるという事になります。また,遺言書を作成しないにしても,前の遺言の内容と矛盾する行動を遺言をした方がとった場合も遺言は撤回されたという扱いになります。

 問題はどこまでが矛盾をする内容であるのかという点です。裁判例でも問題になったケースとして,次のようなものが考えられます。自分の世話をしてくれていた方と遺言をする方が養子縁組をし,ずっと面倒を見てもらう代わりに財産を渡すという内容の遺言をしていたケースです。その後,双方の折り合いが悪くなり,養子縁組を解消(離縁)をしたという事柄を考えてみます。この場合に,あわせて遺言書を作り変えてしまえば,撤回したことは明らかですから,問題は生じません。しかし,様々な事情から遺言書を作り変えなかった場合に,なお前の遺言は意味を持つのかという点が問題になります。

 こうした場合,遺言で財産を渡すという事は,面倒を見てもらう・養子縁組を前提にしていました。その前提を失った場合には,通常は遺言の内容をかえるのが遺言をした方の意思と考えられますし,まさに遺言と矛盾した事柄になりますから,遺言と矛盾する行動をとったということで遺言は撤回されたというように考えられます。

 このほかに,遺言で渡すとしたものを処分した・遺言書を破棄したという場合も撤回になると定められています。破棄に関しては,遺言書を捨てる破くなどのほかに,判読できないようにする(内容や日付)ことが一般的に考えられます。ただし,別のコラムでも取り上げています紙全体に赤い斜線を引く行為については,判読はできるけれども,この行為の意味するとこは何であろうかという点が問題になります。判読できるならば撤回ではなく訂正などの問題なのかという話が出てくるためです。このケースでの判断は先ほどの行為の一般的な性質から読み取るという方法で「破棄」に当たるとしていますが,行為の内容によって微妙なところも出てくるので仮に破棄により撤回したいのであれば,その点を明確にしておいた方がいいでしょう。加除訂正であれば,法律上の形式的なハードルのクリアも問題になります。

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