法律のいろは

会社の備品などを壊した場合に,弁償はどこまでするべきなのでしょうか(その②)?

2016年1月9日 更新 

 前回は,勤務している際に会社の備品などを壊した場合に弁償しなければいけないとして,給料からの天引きなどが許されるのかという話を触れました。今回は,そもそもの話として,弁償はどこまでしなければいけないのかという話をしていきます。

 他人の物を壊したのだから弁償は当然というのは,感覚としてそうかなという気はします。一方で,会社側からすると,そうした事故等のリスクがある状況で従業員に働いていもらっているところから利益を得ているという面もあります。そのため,いかに勤務している会社の備品などを壊したからといって,全ての損害を賠償する義務があると常にいうのには疑問も出てくるところです。

 そもそも,会社の備品を壊してしまうという状況も常に責任を負うわけではありません。通常するべき注意をしていた(そんなことをしたら壊してしまうよ予測でき,避けられたはずだが,避けられなかった)という事情があって,初めて壊した側の責任が発生するところです。

 こうしたことから,会社側から損害賠償の請求をこうした場合にするというのは問題はありません。問題は,どこまでの負担を負うのかという事です。先ほど述べた事情もあり,最高裁の判断として,損害の公平な負担のために損害賠償請求をできる金額を制限するというものが存在します。また,壊したのが軽い落ち度に基づくものであれば,その業務・仕事に伴うものであるとして,損害の負担を従業員に求めることを許容しないというものも存在します。

 このため,普段の業務で使っていたパソコンが壊れたとか,ある程度注意をしていたけれども備品を誤って壊した程度の話では,会社からの損害賠償請求が認められない可能性は十分あるところです。ちなみに,先ほどの最高裁で問題となったケースでは,タンクローリーの運転中に追突事故を起こしたものですが,会社側の事業の規模・壊した従業員の仕事の内容や勤務態度,労働条件・会社が壊さないよう予防策を講じていたか・損害を減らすための措置(保険の加入など)をしていたか等を考慮するとしています。

 そのため,会社が保険に加入していない・研修などをしていない,壊した側の落ち度がどこまで大きいとは言えない・加重勤務などがあった,等の事情があれば,会社から損害賠償請求をされても認められる金額が少なくなる可能性が高くなっていきます。

 次回に続きます。

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