法律のいろは

亡くなった親族が部屋を借りていたようなのですが,家賃など問題は出てくるのでしょうか?

2017年5月8日 更新 

 親族の中でも連絡を取っていない・かかわりを持っていない方がいて,実は家を借りていたが亡くなっていたということがあるかもしれません。こうした場合に,それは自分のことではないから関係ないという考えがあるかもしれません。それが,行方不明になった親や子供のいない兄弟の場合にはどうなるのでしょうか?

 

 結論から言うと,法律上リスクがあります。どのようなリスクかといえば,未払いの賃料の支払いや賃貸借契約を終了させて退去をする場合の費用面の負担が生じかねないというものです。これは,相続が発生するためです。相当遠縁で相続関係に法律上ない場合には問題ありませんが,親や子供のいない兄弟の場合には,相続関係にある場合がありますから,こうしたリスクが顕在化することがありえます。

 アパート等に限りませんが,賃貸借契約(無料で借りている場合は終了します)は借りている方が亡くなったからといって終了しません。原状回復して家主に明け渡すまでは使ったままの状態になりますから,そうした親族が亡くなったとしても明け渡しまでは家賃は当然発生することになります。そして,こうした家賃は本来の相続分に応じて分けられるのではないかという話になるかというとそう簡単ではありません。

 

 少し整理していうのであれば,その方が亡くなるまでに発生していた未払いの家賃は相続の対象になりますから,相続分に応じて当然に分割されます。そのため,各相続人の負担は相続分に応じた金額になります。これに対して,その方が亡くなった後に生じる家賃は分割はされません。わかりにくい点ですが,借主としてそのアパート等を使う権利は相続人全員が持っている形になり,特に分けることはできません。家賃は,こうした賃貸借契約によってそのアパート等を使うことに対しての代金的な性格を持ちます。そのアパート等を使う権利が分けられない以上,その代金的なものも分けられません。そのため,各相続人が全額を支払う義務を負います。ただし,このうち相続人の誰かが支払った家賃を二重取りすることはできませんから,その部分は減ります。

 わかりにくいので,具体的に言えば,60万円の家賃がその親族の死後に生じている場合に,子供がその方におらず兄弟2人が相続人だとします。この場合,兄弟はそれぞれ60万円を支払い愚務を負いますが,片方が20万円を支払えば,残る支払い義務は40万円となります。

 

 亡くなった方の荷物などがそのままの場合に面倒なのは,家賃が発生し続ける点・気づいた際には未払い金額が大きくなっている可能性がある点です。時効の主張ができる場合にはいいですが,それができない場合には大きな負担となりかねません。こうした負担を避ける方法として,相続放棄がありますが,期間の制限(詳しくは以前別のコラムで触れています)が相当厳しいので,こうした期間を過ぎているとリスクは極めて大きくなります。このような家賃その他の金額を後で気づくケースは空区は相当長期間疎遠であることが多いように思われます。期間の制限は,その方が亡くなり自らが相続人であることを知ってから3か月以内です。この3か月は延長を求めることができますが,疎遠なケースでは難しいでしょう。裁判例上,疎遠で財産があることを気づかないとしてもやむを得ない事情・相続財産がないと信じることに合理的理由があるといえる場合には3か月のスタートが後ろになります。ここでのスタート時点はあいまいな点は残りますが,相続財産の一部を認識したであろう時とされています。実際には疎遠だと負債も財産も知らないということが多いと思われますが,財産を認識して負債を認識していなかった場合には裁判例このスタート時点が後ろにならない可能性もあります。

 

 こうしたこともあり,特に親や兄弟姉妹が亡くなった際など注意を要する場合があります。

 

 

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