法律のいろは

妻側に生活費(婚姻費用)を支払わないままに離婚を求める場合のリスク

2017年6月30日 更新 

 男性にとって妻と別居をした後に,生活費(婚姻費用と呼ばれるものです)の支払いを求められるケースはそこそこあるのではないでしょうか?生活費(婚姻費用)は別の個所でも触れましたが,扶養義務に基づくもので夫婦間や子供との間では自らの生活の余裕を削ってでも負担するべきものであると一般には考えられています。

 

 こうした義務ではありますが,男性側から妻へ離婚を求めたものの応じないということはあるかもしれません。そうした場合に,要求に従ってもらうために,こうしたお金の支払いを止めたいという気持ちが起きるかもしれません。そうしたことに問題点やリスクがあるのかを触れていきます。

 

 まず,こうした場合に妻側から婚姻費用の分担の調停を申し立てられ,話し合いがつかず家庭裁判所の裁判官の審判(判断)に至ることがあります。不服を申し立てたにしても最終的に支払いを命じる内容で確定した場合には,給与などの差し押さえのリスクが生じます。差し押さえがあれば,給与から支払いがなされることがあり得ますし,勤務先との関係で気持ちの面などでいずらくなるということがあるかもしれません。

 

 次に,こうしたリスク面を除いての問題点ですが,「悪意の遺棄」と呼ばれることにつながりえます。「悪意の遺棄」とは,正当な理由なく夫婦間の扶助義務を守らないことで,生活費(婚姻費用)の支払い義務を守らないことは十分に該当する可能性のあるところです。こうした「悪意の遺棄」は法律上の離婚理由(離婚裁判の際の離婚理由)となるところで,離婚を求める側にとっては離婚理由ができるのであるからいいのではないかと考えるかもしれません。

 しかし,不倫・不貞行為については,これも同じく離婚理由ですが離婚理由を作りだした側(有責配偶者)からの離婚請求には裁判例上高いハードルがあるところです。先ほどの「悪意の遺棄」を作りだした側からの離婚請求についても同じようなところが当てはまりかねませんから,離婚を早く求めたにもかかわらずそこから遠ざかりかねないという問題点につながりかねません。

 こうしたことは離婚を求める側からすれば問題点でもありますし,リスクの高い行動になりかねません。ちなみに,ここでの話はあくまでも生活費(婚姻費用)の支払いを全くしない(あるいは,ほとんど市内に近い場合)ことの問題点です。妻側から言われたままの金額を支払わなければいけないということでもありません。あくまでも取り決めた金額等正当な範囲での支払いの負担は追うものと考えて,目標に至るにはどうすればいいのかを様々な事情から考えていくのが重要と思われます。

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