法律のいろは

老親の面倒を見たことで,遺産相続の際に取り分は当然に増えるのでしょうか(寄与分の意味合いと遺言での対応)?

2017年10月15日 更新 

 地方の場合は特に当てはまることがありますが,子供が親元から離れて都市部に暮らしていて,特定の子供が様々な形で面倒を見るという形がありえます。この場合は,状況によっては将来に大きな紛争につながりかねませんので,事前に対応をしておいた方がいいでしょう。

 

 まず,老親を引き取って特定の子供が面倒を見ている場合に,その子供と家族が大きな負担を負うことは間違いないでしょう。面倒を見ることで,老親のお金を使わなくて済む場合(使う福祉サービスが少なくなる)その他さまざまなメリットを得ていることはありえます、そのため,後の財産分配(老親がなくなり,相続に伴い遺産分割をする場面)で何かしらの見返りを期待するということはありえるでしょう。遺産分割を行う際に修正要素としてその貢献分を考慮する制度として,法律上「寄与分」と呼ばれるものがあります。これは,老親(相続が発生した場合の被相続人)の財産を増やす・維持するのに特別の貢献をした場合に,取り分に反映させるものということはできます。

 ただし,ここでの貢献は被相続人が生存中の「特別な貢献」があったことで,財産の維持や増えることにつながった場合のみ認められます。親子の間では「扶養義務」という面倒を見る義務がありますので,この範囲内と評価される(個人の気持ちによるわけではないのに注意が必要です)場合には,特に反映はされません。特別な貢献とは評価されないためです。同居をして面倒を見ることは多くの場合に,扶養義務の範囲であると考えられる可能性があります。実際上の印象として,扶養義務の範囲という点と「特別な寄与」という側面が広くとらえられていて,寄与分が認められるケースは少ないように思われます。面倒を見ることで,生活費のための支出が減った・介護などのサービスを頼む費用が減ったから財産が維持されたといいたいところでしょうが,こうした側面があります。また,仮に特別な貢献と評価されても,財産の維持などとの関係でどこまで反映されるのかという問題もあります。

 相続人の配偶者について新設された「特別寄与料」の制度では,特別な寄与までの貢献はなく,遺産分割とは別の枠組みで貢献を反映してもらう制度ができており,今後の運用がどうなるのかなども気になるところです。

 寄与分における貢献は特に対価をもらっていれば,その貢献はすでに報われているため考慮から外れます。同居して老親の面倒を見ている場合には,因果関係は不明ですが,相当程度お金の援助を受けていることもありえますので,ここをどう考えるかという問題もあります。寄与分はプラス財産の配分である遺産分割協議で考慮されるものですので,被相続人から引き継ぐ負債の配分や遺留分に関して何かしら考慮されるものではありません

 このように,遺産分割で反映されるかどうか事態を含め難しい問題があるので,同居や世話をその老親が反映させたいという意向をお持ちであれば,遺言をしてもらった方がいいでしょう。ただし,内容や作成時点での老親本人の判断能力次第では,遺言の有効性をめぐるトラブルや遺留分侵害請求を受ける可能性もありえます。

 

 次に,老親の面倒を見ている特定の子供は場合によっては親の通帳その他お金の管理を任されている場合が多いかと思われます。この場合,曖昧な点は残りますが,どこかでお金の管理を委託する合意がなされている可能性があります。ただし,老親の健康状態によってはそうした合意がなされたのかが後で問題となることもありえます。出金その他のお金の使用がどのような用途になされたのかはっきりしない部分(通常の利用は領収証をとっておかないとはっきりしないものが多いのが普通でしょう)

 特に大きなお金の引き出しや利用はあるけれども,用途が不明な場合は使い込みその他を疑われ争いになる可能性があります。大きなお金の利用(どこまでが大きな金額の利用かという問題はあります)に関してトラブルを防ぐためには,何の利用かがわかるように・老親の承諾を得ていたのであれば,その旨証拠に残しておいた方がいいでしょう。

 

 実際の場面でどうしたらいいか気になる場合には,弁護士など専門家に相談をしてみられるのも一つの方法でしょう。

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