法律のいろは

近隣での野良猫への餌やりをしている方は被害を訴えている方に慰謝料の支払い義務を負うのでしょうか?

2019年1月20日 更新 

 時々,野良猫に餌をやらないで下さいという張り紙を見かけますが,自らの飼いネコへの餌やりだけでなく,野良猫への餌やりによって糞尿の被害が増えた・鳴き声がうるさい・車の上に猫の足跡がついた等の話が近隣のトラブルになる可能性はありえるところです。同様の話は,たくさん猫を飼うことでこうした被害が出たという近隣トラブルも考えられるところです。今回は,こうしたネコへの餌やりの是非はおいておくとして,近隣トラブルになった際に,慰謝料請求が裁判になった際に認められるかという話を最近の裁判例に触れて述べていきます。

 

 結論から言うと,不妊や去勢の措置を講じず野良猫に餌を与えることで,繁殖によりネコの数が増え,近所の住民の家の敷地に糞尿などの被害が増えたということで慰謝料などの請求がなされ,裁判所がエサをやっていた方に,慰謝料などの支払いを命じた判決はあります。そのため,事実関係にもよりますが,餌やりをしている方に慰謝料などの支払い義務が生じる場合はありうるとは言えるでしょう。

 それでは,これはどのような理屈からいえるのでしょうか?

 

 猫への餌やりは動物愛護精神に基づくもので,このこと自体が悪いということはできません。一方で,慰謝料等の支払い義務を命じられるのは,他の人の権利を侵害しているということによるのですから,他の人の権利を侵害するような程度までであったのか・そうしたことを十分わかっていたはずなのかが問題になるところです。ここでは,近所の方の生活の平穏や家などの財産を侵害しないということとの限界がどこまでなのかという非常に難しい問題があります。

 通常はいきなり慰謝料などの請求が問題になることは考えにくく,近隣で苦情を訴える方が直接あるいは自治会などを介して餌やりをしている方に苦情と是正を訴えることが大木かと思われます。場合によっては,行政を介して指導をしてもらうということもありえます。この中で,実際に野良猫に餌やりをしているのかどうか・実際に餌やりによって猫が周辺にいつく・繁殖することで糞尿被害が生じるようになったのかが問題になることは十分あり得ます。このような事実関係はこうした段階だけでなく,裁判になった際にも十分問題となるものです。

 実際最近の裁判例の中にも,途中で行政の指導などが入るようになったケースで,少なくともこうした時期以降は餌やりをしている方も近所の方の平穏や財産を侵害していることは認識できたはずであるということで慰謝料などの請求を認めたものがあります。このケースでは,餌やりの頻度や目的(野良猫の捕獲目的であったのか,単に餌をあげる目的であったのか)を含めて事実関係が広く争いになっています。こうした慰謝料などの支払い義務を餌やりをしている方に認めた裁判例では,動物愛護の精神は尊重されるべきではあるけれども,餌やりでネコがいついた場合には近所に糞尿などの被害が生じる可能性があるから,そうならないように配慮をする義務があると判断しています。こうした配慮のための行動をとらないことが問題と考えることになるでしょう。

 

 ただし,被害を受けたという側にとっても事実関係が問題になる場合には,証拠などで裏付けられるのかが問題になりますから,吟味が重要になってくるでしょう。他方,被害が生じているという話があった際には,餌やりをされている側も近隣の方と話をしてどのように対応していくことで問題を起こさずに済むかを考えていくことがトラブル防止につながるかもしれません。

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