法律のいろは

勝手に遺産分割協議に基づく登記や実態と異なる遺産分割がなされた場合の是正方法と注意点とは?

2021年3月16日 更新 

 他のコラムでも触れていますが,相続人の一人を抜いて遺産分割協議をした場合は遺産分割協議は無効です。実際は相続人の一部が遺産分割協議書に署名や押印をしていないのに勝手に署名と押印がなされていた場合には,私文書偽造などの犯罪に該当しますが,気づかずに登記などがなされることはありえます。また,相続人と思っていた例えば亡くなった方の配偶者が実は婚姻が無効であった場合にも実態とは異なる遺産分割協議がなされていることになります。

 

 この場合に遺産分割協議は無効ですから,相続に関する登記は抹消その他やり直しを求めることができます。ここでは相続分の侵害がなされているのでその回復を求めることになります。法律を見ると,権利行使の期間制限しか定められていない「相続回復請求権」というものが存在します。この権利自体はまさしく,表面上相続人には見えるが実際には相続人ではない方・そこまで相続分はないのにあるかのように見える他の相続人による相続分侵害からの救済を求める権利になります。

 この規定にある期間制限を受けてしまうと,期間経過後には救済を求められなくなるので,期間制限を受けるのがどういった場合であるのかは重要な話になります。法律上は,侵害された状況を知ってから5年・相続開始から20年経過した場合であると定めています。このうち前者は裁判を起こすなどした場合にリセットが可能な時効と呼ばれるものです。

 

 相続分侵害がなされていることをわかりながら長期間放置するということはそこまではないでしょうけれども,簡単に期間制限にかかってしまうと人間関係もあって時間が経過した場合には大変なことになりかねません。先ほどのケースにもあるように書類を偽造したようなケースまで期間制限を設けるのは妥当ではないだろうということもあり,実際には期間制限を使うことができる場合は裁判例上相当限られています。結論から言えば,自らに実際はそこまで相続分がないことを知らず(そこまで相続分があると信じ)・そのことに合理的な理由があった場合にのみ期間制限による恩恵を受けることができるとするものです。こうした誤信と合理的な理由は,侵害となる事実(先ほどの話では遺産分割協議書作成の時点)で存在する必要があります。また,誤信と合理的な理由の存在は期間制限の利益を主張する側(先ほどのケースでは遺産分割協議書を作成し,侵害をしているとされている側)が証明をする必要があります。実際には合理的理由は客観的な事情から言えるため,こちらの立証が重要でかつハードルは相当に高いものになります。

 ただし,遺産に含まれる土地建物を実際には相続人ではなかった人物(先ほどの配偶者で婚姻が実際は無効であった場合)が取得し,住んでいる場合に,先ほどの話とは別に時効で土地建物を取得したという反論を受ける可能性は十分ありえます。これは,権利があるという信頼がなく,信頼に正当な理由がなくとも20年間居住その他で支配をしていると時効によって所有権などを取得できるという法律の規定があるためです。最高裁の判例ではこのことを認めたもの自体はないものの,多くの見解が工程をしているところです。

 また,相続分侵害をしている方が別の方に土地や建物を譲渡した場合に,既に登記も経ていて実際の権利者であるという印象を与えることもありえます。きちんと調査をしても実際の権利者であるとされる場合(先ほどのケースでの婚姻が無効あるいは遺産分割協議書が無効というのは他の方は容易に走ることができない事情と思われます)には,法律上実際の権利者から譲渡を受けた(売買で買い取りをした)と信頼している方を保護する法律の規定が存在します(厳密には類推適用という似た場合であると考えるもの)。このことの意味はその方の信頼を保護することで,実際の権利がある方の請求を阻む(引き渡しや登記を移すことを拒むことができる)ことを可能とするものです。

 

 したがって,直接の相手方について期間制限を使える場合が少ないといっても,完全に救済を図ることができない場合がある点には注意が必要です。もちろん,偽造であったといえるのかどうか(相続分の侵害がある)という証拠があるといえるかどうかという問題もあります。うっかり署名や押印をしたという場合にはそもそも相続分侵害があるといえるのかという話しもありますので,当時どうであったのかをきちんと整理しておく必要があるでしょう。

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