法律のいろは

遺言が無効かどうかが問題になるケースとは?(その⑤)

2013年5月14日 更新 

 自筆証書遺言(自分で遺言を書いた場合)について,遺言が無効になる場合をこれまで触れてきました。

 遺言を書くだけの物事を認識する力があったかどうか・自分で書いたのかどうか,ということがこれまで触れてきた点です。このほか,遺言を書いた日付を書くことと自分の名前を署名することと押印することが必要となっています。

 

 日付を全く書かなかった場合には,遺言は無効となってしまいます。せっかく書いたのにということになりかねません。遺言を書いてから封筒に入れて,封筒に日付を書く方もいるかもしれませんが,裁判例ではこれでも日付を書いたのだと判断するものがあります。とはいえ,遺言を書くときは,遺言の中に日付を書いておきたいところです。封筒が当然に遺言書の一部という理解ができるのかという点が門田になりかねないためです。

 ちなみに,遺言書に各日付は実際に遺言を書いた日にするのが原則です。遺言書を書くのに悩んで数日かかった場合はいつになるのかという不安もあるところですね。普通は書き終わった日になるでしょう。ならば,遺言を書いてから数日後に書き忘れに気づいた場合はどうなるのでしょうか?

 遺言を書いた日付を書くのだから問題はないと思われるかもしれませんが,裁判例で争われたことがあります。裁判所の判断は遺言書は有効というものでしたが,遺言書の有効性が問題になった時の凄さを物語るような気はします。

 

 先ほどの話からすると,実際に書いた日と違う日を書いた場合には遺言は無効になるのが原則となりそうです。裁判例でも問題になったケースがありましたが,遺言書を作成した経緯等から実際に書いた日が分かり,誤記であることがわかるため,遺言は有効と判断されています。このケースは,経緯等から誤記であることが明らかだから,問題がなかったというものですから,日付を書く際には気を付けておきたいところです。

 

 ところで,日付は当然どの日か分かるようでないといけません。裁判例では,吉日と書いた遺言書が,どの日に書かれたのかが分からないという理由で無効と判断されています。

 

 たかだか,日付と思われるかもしれませんが,遺言書を左右する存在であるところが怖いところですね。自筆証書遺言については平成30年になされた法改正で方式が緩和された(形式面での無効可能性が減った)という話がありますが,緩和されたのは一部のみ(財産目録部分のみ)であるため,現在も自筆かどうか・日付や押印,訂正や加除が方式に従っているのか等形式面で一気に無効になるリスクが存在します。公正証書遺言と比べて,費用がかからない(保管サービスを使っても安くなる可能性が十分あります)というメリットとの兼ね合いで,どちらの制度を使うのか(専門家に相談をするのか)などを考えておく必要があるでしょう。

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