法律のいろは

所有者不明の土地その他に関する法改正がされました。遺産分割未了の土地についてはどうなるのでしょうか?

2021年9月18日 更新 

    令和3年に土地の隣近所の法律関係の改正・所有者不明土地を含めた共有に関する規制の改正・相続開始から10年を超えて遺産分割がなされない場合の規制などが変更されました。このほかに,ハードルが存在しますが,相続で取得した土地を国に引き取ってもらう制度・相続登記に関する申告登記などの義務化等がされました。


    今回は遺産分割未了の場合の改正内容を中心に触れていきます。

 

〇相続開始から10年以上遺産分割がなされない場合の扱い

 所有者不明の土地については多く該当しそうですが,そうでなくても様々な理由から相続開始から10年を超えても遺産分割がなされないケースはままあります。これまでは,戸籍関係を士業が職務上請求の制度を用いて調査し(遺産分割協議を行う等の依頼事項があるのが前提です),かなり縁遠い相続人の間で遺産分割協議を行う・協議が整わない場合には遺産分割調停の申し立て(調停に代わる審判)に至るケースが存在してきました。

 

 今回の改正で新たに相続開始から10年以上遺産分割がなされていない場合の規律が設けられました。遺言がなく複数の相続人がいる場合には,各遺産について相続分において共有の形になります。通常,遺産分割協議では,法定相続分や指定された相続分を特別の財産の維持のために貢献したという点の考慮(寄与分)の他,生前の援助の調整(特別受益)等を考慮して行うことになります。10年以上経過した場合には,同じく遺産分割協議がなされる反面,法定相続分・指定相続分で分割協議を行うこととなりました。修正を図る利益を奪われるという点でこれまでとの違いがあります。

 例外的に,10年以内に遺産分割協議を行えないことに「やむを得ない理由」がある場合にはそうはいきませんが,その理由は限定されています。いわゆる病気その他というのでは不十分で,10年経過の直前にそれまで行われてきた遺産分割調停を取り下げる等法律上の障害が存在した場合に限られています。

 

 このほか,被相続人の方が土地や建物の持ち分を持っている(共有者である)場合があります。この場合に共有関係の解消は基本的には遺産分割ではなく共有物分割の制度(この制度自体も一部改正が加えられています)によるはずですが,この制度にも改正が加えられています。それによると,相続開始後10年を経過するまでは遺産に属する共有持分を共有物分割により解消することはできません。10年を経過することで共有物分割の方法により解消をすることができるようになりますが,相続人の中からこの方法による解消に対する異議を一定の期間内に申し出た場合には,共有物分割はできなくなります。ちなみに,この制度によって共有関係が解消された場合には,遺産分割の前に遺産に属する財産が相続人の一部により処分される場合にあたります。この場合には,共有物分割を求めた以外の相続人全員が同意をすれば,民法906条の2の適用を受けることになります。

 

〇所在が分からない相続人の持つ遺産共有持分は?

 先ほど触れました戸籍や住民票関係の職務上請求を使うことで相続関係で分からない部分が出るケースはそこまではないと思われますが,所在不明者が出てくる可能性はあります。

 

 所在不明の相続人(というか共有者)の持ち分への対応としては,①特定の共有者に所在不明者の持ち分を取得させるよう裁判所に申し立てる②他の共有者から持ち分を取得することを前提に,所在不明者の持ち分を譲渡する権限を特定の共有者に与えるよう裁判所に申し立てる制度になります。この制度は,相続人の中から異議を出されると,裁判所が手続きを進めることができなくなりますので,活用を考える際には,異議の可能性や譲渡の見込みなどを事前に確認しておく必要があります。所在不明者が何かしら異議を出すことは考え難く(そもそも,それなりに利害の関心があれば話し合いがなされているのが普通です),この辺も踏まえた事前の準備がポイントになるでしょう。

 

 

 所在不明者である共有持分を持つ方やその方が所有する土地に関しては,管理制度なども設けられるところです。それぞれの制度や見通しなどをきちんと理解しておく必要があります。残りの改正点は次に触れていく予定です。

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