法律のいろは

贈与ではない場合でも贈与と同等に課税される場合とは?

2021年7月30日 更新 

   相続の場面と同様に,相続税法上,贈与に関しても贈与と同等と考えて贈与税を課税される財産があります。贈与税は相続税を補完するために税率は高めですから,同等と考えられるかどうかは重要な話となってきます。いくつかのタイプが法律上規定されていますが,特に「著しく低額で譲渡」された場合が何であるのかは問題となりうるところです。なお,支払い困難な方への譲渡については別になる部分があります。

 

 財産を譲渡する際の所得税に関しては,時価の1/2を下回る場合に,譲渡する方に時価で譲渡したとみなして税金がかかる場合・ここでは税金はかからないが譲り受けた方がさらに譲渡する際まで課税を繰り延べると規定されています。これに対して,贈与と同等に扱われる場合である「著しく低額」とは具体的になんであるかは法律上はっきりとは定められていません。ちなみに,著しく低額での譲渡を贈与と同等に扱うのは(契約上は贈与ではないことが前提),課税を行う上での公平を図るためであるとされています。

 裁判例で問題となったケースでは,贈与に関しては具体的にいくらになれば著しく低額になるという基準はなく,対価の金額や譲渡に至る経緯・譲渡をした財産の相続税評価額などを考慮して判断をするとされたものがあります。相続税評価額とは多くの場合には,国税当局から出されている財産評価基本通達に基づいて算定されたもの(ただし,例外はありえます)になります。市場動向なども踏まえて実質贈与かどうかが判断されることになりますので,経緯や金額面が重要になってくるものと思われます。

 

 別のケースでは,こうした「著しく低額」な譲渡に該当するかは,先ほど述べた諸要素に照らして,経済的合理性を欠く場合であると述べるものがあります。経済的合理性を欠くかどうかといっても,結局は様々な要素からその金額とすることが合理的に説明できないかどうかという話ですから,結局財産の種類や金額の決まり方や背景事情が影響を及ぼすことにはなります。ただし,金額面などから見て課税負担の衡平を損なう事情があれば,譲渡にかかわった当事者の意図などは考慮しないと述べる裁判例もありますので,背景事情があれば当然に「著しく低額」な譲渡にあたらないというわけではありません。

 

 少なくとも,考えるポイントとして,先ほど述べた相続税評価額等客観的な資料との乖離がどの程度あるのか・その他時価とされる指標との乖離がどの程度なのか・この乖離の程度から見て背景事情等から見て合理性を説明できるのかなどの点が重要になってくるものと思われます。時価などがきちんと算定できるかは,市場性のない財産(取引があまりされていないもお)等によって異なってきます。一族経営の会社や売買実例の少ない土地などはその一つの例です。

 税法上のいわゆる同族会社に対して,財産を「著しく低額」で譲渡がなされた場合には,譲り受けた側の株主も会社資産の増加⇒株価増加により実質贈与を受けたと評価できる場合があるとされた裁判例も存在します。この場合には株主自身が「著しく低額」での譲渡を受けたということで贈与とみなされ贈与税が課税されることになります。

 

 このほかにも,贈与といえるだけの因果関係があるのかどうかが問題になったケースも存在します。そこでは,一方が経済的な利益を失うことで他方の方が負担がないかほぼすることなく同種の経済的利益を受けたことが,贈与と同等といえるためには必要であると判断されています(問題となったケースでは一部を否定し,一部を肯定)。

 

 このように,実質贈与といえるのかどうかが問題となるケースがままありますので,特に親族間で金額を低めで譲渡する際には注意が必要です。後で実質贈与であったということになると結局は税務負担が重くなるためです。

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