法律のいろは

相続人がいない場合の「相続財産清算制度」と「特別縁故者」。縁故ありとする基準や資料とは?

2023年6月10日 更新 

 一部制度の改正があり,これまで「相続財産管理」の制度と呼ばれたものは内容の一部変更を伴い,「相続財産清算」の制度に代わりました。亡くなった方が遺言を残さず,法律上の相続人がいない場合に,相続人には該当しない親族や生前かかわりのあった方が,遺産の分与を受ける制度として「特別縁故者に対する分与」の制度があります。この制度は他のコラムでも触れていますが,「相続財産清算」制度を使って清算人の債務の返済や相続人の創作などを行ってもなお財産が残った場合に,「特別縁故者」にあたると家庭裁判所の裁判官が判断すれば,財産の分与が認められるという制度です。該当して分与を求める問うのであれば,「縁故」があるという申し立てを根拠となる事実や資料の提出とともに行う必要があります。

 あくまでも,「縁故者」にあたるのか・どう「財産を分与」するかは裁判所の判断によるもので,当然②何かしらの請求権があるわけではないというところです。

 

 今回触れるのは,どういう場合に「縁故」があるといえるのかという話です。比較的最近の裁判例(1審の判断を覆した高等裁判所の判断・東京高裁平成27年2月27日決定・判例タイムス1431号126頁)も存在するところです。このケース自体は相続人がないままに亡くなったからの財産について「特別縁故者」にあたるから分与を求めた親族(相続人ではない)の請求について1審の判断(審理)に不備があるからやり直しのため,1審に判断のやり直しを命じたものです。

 1審では,生前の電話連絡・家を訪問するや一緒に旅行に出かける・亡くなった際には葬儀を取り仕切った(ただし,その費用は相続財産清算人(当時は相続財産管理人)から回収した)等の事情から,「縁故者」に該当すると判断しています。そのうえでの「財産を分与する」の内容に踏まえんのある親族の一部からの不服申し立てに対して,そもそも1審で主張されている亡くなった方とのかかわりあい等の状況から「縁故者」に該当するとはいいにくく,さらに該当する事情があるかどうかを審理するために審理やり直しを命じたというものです。

 

 不服を申し立てた側にとってはより不利益になりかねない(そもそもの1審で認められた財産が分与された結果が否定されかねないため)判断となっていますが,審判という手続きではこうした変更もありえます。

 

 そもそも,「特別縁故者」の制度は,本来相続人がいない場合に国に遺産がうつることの例外を定めた規定なので,亡くなった方と生計を同じくしていた・療養監護に勤めていた場合などに遺産のすべてか・一部を分与することを裁判所は命じることができるとされています。そのため,例外に当たる事情は限定されるということになります。先ほどの裁判例も,上に挙げた場合以外にそれに近い状況が要求されるという判断を示しています。

 そうなると,一緒に住んで生活をしていた・身の回りの世話などをずっと行ってきた,つまりその方の生前から深い付き合いがあったことが言える必要があります。そのため,亡くなってからのつながりや遠縁の親戚だからといった事情では「特別縁故者」には当たりにくいことになります。先ほどのケースでも,単に一緒に出掛ける・家の訪問を行う等の話では生前の付き合いが弱く,葬儀も結局費用を亡くなった方の負担としており,特に大きく貢献をしているとは言いにくい面が存在するという点が言える点を考慮したものとも言えます。

 援助や一緒に生活していた・亡くなった方に養ってもらっており,今後も必要な面があるなど,密接な生活上のつながりが写真や手紙(基本的には亡くなった方の生前のもの)等の資料から裏付けられることはケースによっては重要になってくるものと思われます。特に「その他亡くなった方と特別な縁故のあった場合」は外苑が明らかでない部分があります。生活資金などを援助した方や身の回りの世話をしてきた方・財産管理をずっと行ってきた方以外のどこまで含まれるかは明らかではありません。

 仮に典型的に当てはまりにくい場合には,亡くなった方の生前の生活での密接な結びつきを示す事情(具体的な話)や裏付け資料は先ほど述べたように重要な意味を持ってくるでしょう。このように,遠縁の親族や何かしらの付き合いがあればそれを伝えれば大丈夫というわけではない点には注意が必要です。

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