法律のいろは

遺産分割を行った後に見つかった遺産を対象に遺産分割を行うとき遺産分割の方法とは?

2023年5月19日 更新 

 遺産分割協議を行う際に先行して相続人の調査や遺産の内容の調査を行うことはよくあることと思われます。その中には当然に分割されるだろう負債も含まれますが,調査した内容に基づき相続分その他に基づいて遺産分割協議を行うことが多いのではないかと思われます。その際に,それでも事後に遺産が新たに見つかった場合にどうするのかを取り決めておくこともありますし,それはその際に協議をするという形にしておくこともありえます。前者の場合には,取り決めた内容に基づいて分割を行うことになります。例えば,「新たに遺産が見つかった際には○○が取得する」というような内容です。

 

 後で見つかった遺産が少額であれば問題はありませんが,その金額が大きな場合には前の遺産分割の内容を考慮するのか・新たに相続分を念頭に行うのかが問題になることがあります。特に,先に行った遺産分割で取得する遺産の内容が様々なことを考慮して人によって取得する内容に大きな違いがある場合は顕著になりかねません。また,問題として別のコラムでも触れています,先行した結果として一部となる遺産の分割が前提とした事情などに照らして無効ではないかが問題になる場合・有効としても後の分割での分割方法や内容に影響をするのかどうかが問題となる場合が考えられます。

 遺産の一部を先行分割するだけの事情が存在し全体として調整がつくのであれば遺産分割の有効性に問題が出ることはないかと思われますし,現在は法律で明確に一部分割は可能とされていますから,問題となるのは前の分割の内容や方法がどこまで影響するのかという点です。今回は,こうした点を判断した比較的最近の裁判例である大阪高裁令和1年7月17日決定・判例タイムス1475号79頁を紹介します。

 

 このケースでは1審の判断を2審が覆したものですが,審判書などから読み取れる簡単な事情は次の通りです。二次相続などの細かな事情はありますが,一度遺産分割を行い受取金額には相続人で大きな違いが出た・遺産分割を行って数年後になり大きな遺産が漏れていることが判明し,新たに見つかった遺産の遺産分割協議がされることになったというものです。前の遺産分割での取得した金額に実際大きな齟齬が相続人の間で生じたのかどうか・仮に生じている場合にこれから行う遺産分割に影響があるのかどうかが等が争いになり裁判所の判断へと最終的に至ったものです。なお,新たに判明した遺産の存在は最初の分割の際には相続人にはわからなかったとされています。

 1審を含め,判断では先行する遺産分割における分割がどのような意向のもとなされたのかという事実経過を吟味しています。そして,経緯や協議内容などから取得する遺産が相続人の間で差があっても,ここまでの分割については最終決着を図るという趣旨でなされたものだと判断しています。つまり,後の遺産分割では新たに見つかった遺産のみを相続分に従って遺産分割を行うということで,先行する遺産分割の内容などは考慮しないという結論に至ります。

 

 あくまでもケースごとの判断で裁判例によっては全体としての公平を図るべく修正を行うとするものもあるようですが,どう解決を図るのか等が難しくなる(話し合いなどが大きく難航する)可能性もありえます。そのため,例えば,後で遺産が見つかった際にだれかが取得するというもの・今回の分割内容を考慮に入れて分割を行う等と項目を定めておくということもありえます。今回紹介した判断では,先行する遺産分割協議での分割内容などを考慮して,調整を必要とする趣旨のものかを考えているように読めますので,こうした項目を定めておくことも考えられます。

 

 

 

 

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