法律のいろは

遺産分割に関心がないので,話し合いから抜けるための方法は(相続分放棄や相続分譲渡など)?

2016年2月7日 更新 

 相続が発生した後に,遺言がなければ,遺産分割のための話し合いを行うのが通常と思われます(ただし,遺言があってもこうした話し合いは可能です)。そうした話し合いに関心がない,そもそも,遺産の取得に様々な事情から関心がない場合には,話し合いに加わるのは単に苦痛になることがあります。特に,揉めているような場合はそうだと思われます。

 こうした場合に,話し合いから抜ける方法としては,どのようなものがあるのでしょうか?

 一つは,遺産分割で自らの取得するものをゼロとして話をその部分だけ取りまとめるというものが考えられます。ただし,遺産分割の話し合いがつかず調停になった場合には,当然に調停の当事者になってしまうため,関りが継続します・裁判所からも手紙が来ます。そのため,煩雑な点は残ります。

 二つ目は,相続放棄をしてしまうという方法も考えられます。相続放棄のよって最初から相続人ではなかったことになりますので,遺産分割の話し合いに関わる必要がなくなります。便利ですが,法律の定める期間内に家庭裁判所において手続きを行う必要があります。なお,相続放棄については,このコラムの別の部分で詳しく触れています。そのため,期間を過ぎてしまうと使えない方法になりかねません。

 三つ目として,相続分を譲渡するという方法が考えられます。相続分を譲渡するのは,他の相続人でも構いませんし,全くの第3者にも譲渡すること自体は可能です。譲り受けた方(全くの第3者を含みます)が遺産分割の話し合いに関わるようになり,譲った方は話し合いに関わる必要がなくなります。相続分の譲渡とは,相続人としての地位を有ることなので本来プラスの財産だけでなくマイナスの財産(負債)も含まれます。ただし,亡くなった方の債権者との関係ではその同意を得て他の方に債務を引き受けてもらわない限りは,支払い義務を法定相続分の範囲で負うことになってしまいます(支払い後に請求するにしても,回収リスクを負うことになります)。

 四つ目に,相続分を放棄するという方法もありうるところです。相続放棄との違いが何かという点が問題になりますが,他に相続人がいた場合にその相続分がどうなるかという点には影響を与えます。たとえば,親と他の兄弟が一人ずつ相続人とすると,元の相続分は1/2,1/4,1/4となります。相続放棄の場合は,元から親と子が一人ずつ相続人となるため,1/2,1/2が相続分となります。相続分の放棄の場合には,共有する権利の放棄と捉える考えが有力なため,放棄される1/4が2:1で配分されます。そのため,4/6,2/6が相続分となります。ただし,この考え方には異論もあります。

 相続分の放棄は家庭裁判所に申述するという手続きも不要ですし,単にプラスの財産に対する権利を放棄した形になります。言い換えると,負債の支払い義務は法定相続で分けられた範囲で当然に負うことになりますので,注意が必要です(それなりに亡くなった方の負債があり支払いを求められる可能性がある場合)。

 四つ目の方法は,遺産分割調停等で話し合いから脱退する方法として用いられることがあります。

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