前回、前々回で婚姻費用(生活費)の支払を受ける権利がある者・支払義務がある者それぞれ収入がゼロであるとき、どう考えればいいかについてお話ししました。
今回はそのつづきで、婚姻費用(生活費)の支払義務がある者に収入があるが、それが年金だったり、他の公的給付だったときどう考えるべきかについてお話しします。
これはいわゆる、熟年夫婦にあるパターンです。年金制度(とくに老齢年金)は、老後の夫婦双方の生活を保障するために、協力しあって保険料を納めるものといえます。ですので、お互いの生活を維持するために年金が支給されることから、年金も収入とみて婚姻費用(生活費)を計算するべきでしょう。それぞれ年金を受け取っているのであれば、年金を収入として算定方式で計算をしていくことになります。
夫婦相互の老後の生活保障という年金制度からすれば、年金収入は給与所得として婚姻費用算定表上も考えるべきです。ただ、厳密には働いて得るものではないため、就労を前提とする、交通費・洋服代や交際費といったいわゆる職業費については控除せずに計算することになります。
特に婚姻費用(生活費)分担調停での話合いの場合、婚姻費用(生活費)を受け取る権利のある者・支払義務ある者それぞれが収入がわかる資料を提出することになります。それに基づいて、婚姻費用算定表から妥当と思われる婚姻費用(生活費)を導き出します。
そのため、特に支払義務ある者から収入が分かる資料が出ないと計算しようがないことになってしまいます。
通常は、調停委員から、収入が分かる資料を出さないのであれば、裁判所から勤め先に対して調査をしたり、賃金センサスから計算するようになる、といえば収入が分かる資料を出してもらえることが多いようです。
それでも、支払義務ある者が出すことを拒めば、上記の方法で婚姻費用(生活費)を算定することになります。ただ、そのような場合、支払義務ある者が調停での話合いに乗ってこないことが多いので、調停での解決は難しく、裁判官が収入に関する資料などから判断する、審判手続きに移ることが多いでしょう。
次回からは、婚姻費用(生活費)を算出するにあたって、問題となりうる費用などについてお話ししたいと思います。
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