法律のいろは

スムーズな相続にするには?その⑦(~遺言書作成にあたって気を付けるべき点(5)~)

2013年7月2日 更新 

 これまで、遺言書の形式的な面について何回かにわたって気をつけるべきことをお話ししてきました。

 今回からは遺言書の内容面で気を付けるべきことについて、いくつかお話ししたいと思います。

○ 誰に、何を、どのくらい相続(遺贈)させるのか明確に

 せっかくのちの紛争を防ぐために作るのですから、上の事柄を明確に書きましょう。公正証書遺言であれば、公証人による文案チェックがなされると思いますので、不明確な文言となるのを防げると思います。

 自筆証書遺言の場合、えてして不明確になることのあり得ますので、注意が必要です。預金その他有価証券は口座ごとに誰にという記載をしておいた方が無難です。金額を記載すると,特に遺言作成時から相続開始の時点までに残高が増えた場合に増えた部分がどうなるのかでトラブルになる可能性があります

   土地、建物については、のちの登記手続きをスムーズに行えるようにするため、不動産登記簿謄本のとおりに記載すべきでしょう。日本では不動産の特定は普段見慣れた住所の記載(住居表示)では行っていません。登記簿謄本に書かれている地番や地目その他を記載して特定をする必要があります。ここの特定がなされていないとそもそも登記手続きで遺言を用いて行うことができなくなり,別途書類が必要なります。

 また、相続(遺贈)する人いついては、遺言する人との続柄、氏名、生年月日まできちんと書いておいた方が良いと思います。

○ できれば財産全部について処分方法など定めておきましょう

 時々、不動産だけ、あるいは預貯金のみ処分の仕方などを定めた遺言書が作成されることがあります。

 ただ、その場合、結局残りの遺産について処分の定めがされていないことから、そのことについて紛争になる可能性があります。また,処分をしたとしてその後に誰が取得するのかなどはっきりしていないと結局誰が取得するのかでトラブルとなる可能性もあります。ですので、できれば財産全部について、誰に、いくら相続(あるいは遺贈)させるかを決めておく方がよいでしょう。

 早めに遺言書を作成した場合には、作成したあとに新たに財産が増えることもありますので、その財産も含めた遺言書を新たに作成していた方がよいでしょう。この場合には全体としてご自身が想定していた通りの内容なのかという点の確認もしておいた方がいいでしょう。

 また、遺言書に書かれた財産以外のものが判明した場合についても、後で紛争にならないよう、書いておくべきでしょう。

○ 遺留分に配慮をした遺言書作成を

 遺留分とは、主に亡くなった人の遺族の生活を保障する目的で、遺産の一定割合の取得を主張できる権利をいいます。亡くなった人の兄弟姉妹は、遺留分がありませんが、配偶者・子や、親など直系の人については一定の割合で認められています。

 遺産を特定の人に全部相続させる、という遺言書を作成するケースがしばしばありますが、上記の、遺留分を主張できる相続人がいる場合、遺留分を主張される可能性が高く、遺産の評価とともに問題になり、あとで紛争が長期化しかねません。

 できれば、遺留分がある相続人には少なくとも遺留分相当の財産(あるいは生命保険を活用してお金の支払いができるようにしておく)を取得させるのも一つの方法です。遺留分相当の財産を売却してお金を確保する場合には,売却について所得税発生の可能性もあり,ここを含めた納税面も含めて問題ないのかの検討もしておいた方が無難です。あるいは、遺留分は相続発生前でも放棄できるため、贈与とあわせて遺留分を放棄する手続きを家庭裁判所で取ってもらうことも考えられます。この場合には放棄が真意なのかどうかが問題となるので,その点を担保できる準備も必要となるでしょう。

 もし、家業を特定の相続人に継いでもらいたい、あるいは、特定の相続人が病弱などで特に生活保障に必要があるなどの理由で、その相続人に遺産全部を相続させたいときは、予め遺留分を持つ他の相続人に話をしておくなどして、できるだけ納得しておいてもらう必要があるでしょう。

 

 

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