交通事故にあって,後遺症が残ったことで働けなくなった分の損害賠償について何回か考えてきました。基礎となる収入をどう考えるかについて,前回の続きです。
前回,あくまでも交通事故にあった方の商売(収入)への貢献分のみが基礎となる収入として考えられるという話をしました。つまり,家族等の貢献分は,基礎となる収入としては考えないということです。
問題は,どうやってその貢献分を考えるかです。一般的には,事業者本人の寄与分と家族等の働きによる寄与分を証拠にもとづき,割合的に認定していくという考え方が取られています。抽象的ですが,貢献の度合いはケースバイケースですので,それぞれの方の場面によって考えていくことになろうかと思われます。
場面は違いますが,交通事故で事故にあった方(事業所得者)がなくなった場合に次のような裁判例があります。事故にあった方が以前得ていた平均的な営業収益額から,交通事故後に引き継いだ方の営業収益額を引いた金額を損害額と推定するというものです。この裁判例では,1年あたりの損害額を考えているのですが,基礎となる収入を考えるうえでも参考となりうるものと思われます。
前回,基本は確定申告に書かれている金額が基礎収入という話をしました。この金額あるいは現実の収入が賃金センサスという統計上の平均賃金を下回っている場合はどう考えるのでしょうか?
この場合には,平均賃金を得ることができる蓋然性があれば,平均賃金をもって基礎収入と考えていくことになります。平均賃金については,全産業合計か全学歴合計か等は事故にあわれた方によってケースバイケースで異なります。
たとえば,米穀・灯油の卸販売や設置配管工事業を営む男性に関して,各種商品小売業者全労働者の平均賃金をもとにすると判断した裁判例があります。男女別の全年齢平均賃金をもとにした例もありますし,30代後半の全学歴計平均賃金をもとにしたケースもあります。
現実の収入の証明が困難な場合には,収入がないという扱いがおかしいこともありますので,各種の統計資料をもとに基礎となる収入を考えていく場合もあります。
次回に続きます。
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